前職の源泉徴収票が来ない、年末調整に間に合わせる手順
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今年転職した人が、新しい会社で年末調整を受けるには、前の会社の源泉徴収票が必要です。国税庁のタックスアンサーNo.2674によると、前職の給与や引かれた税額を確かめられないと、年末調整はできません。その場合は、自分で確定申告をして精算します。
前の会社には、退職後1か月以内に源泉徴収票を渡す決まりがあります。1か月を過ぎても届かないなら、待つより先に催促の記録を残すこと。 催促しても届かないときは、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出せます。いずれも国税庁の公式ページで確認しました(最終確認日:2026-10-21)。
ここでは、架空の会社員Cさんを置き、年末調整の書類を出す11月に向けて読者が抱きやすい疑問を順に答えます。
Q 前職の票がなぜ必要か
答えは「今の会社が1年分の税金を計算し直すため」です。
年末調整は、毎月の給与から引いた所得税と、1年間で納めるべき所得税の差を会社が精算する仕組みです。年の途中で入社した人も、年末まで勤めていれば対象になります(国税庁タックスアンサーNo.2665)。
転職した年は、1年分の給与が2つの会社に分かれています。今の会社は、前の会社でいくら給与が出て、所得税と社会保険料がいくら引かれたかを知りません。その数字を確かめる書類が、前職の源泉徴収票です。
タックスアンサーNo.2674には、確かめられないときの扱いも書かれています。年末調整はできず、本人が確定申告で精算することになる、という内容です。
架空のCさんの場合
例として、次の人を考えます。実在の人物ではありません。
- 30代の会社員Cさん、独身
- A社を2026年6月30日に退職
- B社に2026年8月1日に入社し、年末まで勤める予定
- A社にもB社にも「扶養控除等(異動)申告書」を提出している
CさんはA社の給与とB社の給与を合わせて、B社で年末調整を受ける対象です。B社の担当者から「前職の源泉徴収票を11月中に出してください」と言われています。ところが10月下旬の今も、A社から票が届いていません。
Q 前の会社はいつまでに渡すのか
退職した人には、退職の日以後1か月以内に渡す決まりです。
国税庁タックスアンサーNo.7411によると、給与の支払者は「すべての受給者」に源泉徴収票を交付しなければなりません。期限は翌年1月31日までです。年の途中で辞めた人の場合は、退職の日以後1か月以内に変わります。
Cさんの退職日は6月30日なので、7月末ごろが期限の目安です。10月下旬なら期限を3か月近く過ぎています。
紙ではなくデータで届いている可能性
源泉徴収票は、本人の承諾など一定の条件のもとで、紙の代わりにデータで渡すこともできます(No.7411)。退職時に「給与明細と同じ画面で受け取れます」と案内されていた人は、前職の給与システムやメールを先に確かめてください。
データで受け取った場合でも、本人が求めれば会社は紙で渡す必要があります。B社に紙で出すよう言われたら、A社に紙での交付を頼めます。
Q まず何をすればいいか
前の会社に直接、交付を求めます。そのやりとりを、5つの項目でメモに残してください。 税務署に届出をするとき、そのメモが添付書類になるためです。
国税庁の案内(届出書を出す前の確認資料)では、交付を求めた方法は面接・電話・文書のどれでもよいとしています。そのうえで、次の5点をメモに残すよう求めています。
- いつ(交付を求めた日時)
- どこで(交付を求めた場所)
- 誰に(相手方の応対者)
- どのような方法で(面接、電話など)
- どのようなやりとりをしたか(相手の回答)
電話で頼んだ場合も、日時と相手の名前は必ず書き留めます。メールで頼むと、送った日時と文面がそのまま記録になります。
頼むときに伝えること
Cさんが送るメールの例です。文面は自由ですが、目的と期限を書くと話が早く進みます。
- 6月30日に退職したCであること
- 2026年分の給与所得の源泉徴収票がまだ届いていないこと
- 転職先の年末調整で11月中に提出が必要なこと
- 郵送先の住所
人事の担当者が辞めていたり、給与計算を外部に頼んでいたりして、手続きが止まっている場合もあります。国税庁の確認資料も、期限前なら事務手続きの途中の場合があるとして、まず勤務先に問い合わせるよう案内しています。
Q 催促しても来ないときは
期限を過ぎていて、催促しても届かないなら、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出します。根拠は所得税法第226条です。
国税庁の手続き案内(F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続)による要点は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出せる時期 | 交付期限を過ぎたあと、いつでも |
| 出し方 | e-Taxソフトで作成・提出。紙で作って持参・郵送も可 |
| 提出先 | 自分の納税地を所轄する税務署長 |
| 添付書類 | 給与明細の写し(保存している場合)と、交付を求めたことが分かる書類など |
紙で出す場合の様式は、2026年8月に変わりました。国税庁のページは、最新の様式を使うよう案内しています。修正版の様式は、2026年11月以降に国税庁とe-Taxのホームページで公開する予定とされています。
窓口に持っていく人は、受付時間に気をつけてください。2026年10月1日から、すべての税務署で総合窓口の受付時間が原則9時から15時になりました。土日・祝日と12月29日から1月3日は閉まっています。
届出をしても票が必ず届くとは限らない
届出書を受けた税務署は、勤務先に源泉徴収票を渡すよう行政指導をします。ただし、国税庁は行政指導に法律上の拘束力はないと書いています。相手の自主的な協力が前提です。
国税庁は、届出のあとも自分で勤務先に交付を求め続けるよう案内しています。届出は「税務署に任せて終わり」の手続きではありません。
届出の対象にならない人
次の2つに当てはまる人は、この届出の対象外です。
- 一度もらった票をなくした人:再発行を求める手続きではないため、自分で勤務先に再発行を頼みます
- 雇用契約でない報酬を受け取っていた人:請負契約の報酬などには、給与所得の源泉徴収票がそもそも発行されません
Q 届出書には何を書くのか
国税庁の記載例を見ると、書く欄は大きく4つです。前の会社とのやりとりを、日付順に書く欄があります。
- 届出者の欄:自分の住所・氏名・電話番号
- 事業主の欄:前の会社の所在地・名称・電話番号と、分かる範囲の従業員数
- 不交付の源泉徴収票に係る事項:必要な年分と、その年分(1年間)の収入金額・源泉徴収税額の合計、給与明細の保存の有無
- これまでの経緯:前の会社とのやりとりを日付順に、在職期間も添えて書く
記載例の「これまでの経緯」には、3回分のやりとりが並んでいます。1回目はメールで依頼し、「4月20日頃に交付予定」と返事があった日です。2回目は電話が不在で伝言を頼んだ日、3回目はメールで再度頼んで返信がなかった日です。先に紹介した5つの項目のメモがあれば、この欄はそのまま書き写せます。
収入金額と源泉徴収税額は、給与明細を足し上げて書きます。給与明細を捨てずに取っておくことが、票が届かないときの一番の備えです。給与明細を保存している人は、明細の写しも添付します。
名前を会社に伝えてよいかを選ぶ欄
届出書には、不交付を申し入れたことについて「事業主に氏名を告知して差し支えありませんか」と尋ねる欄があります。「はい」か「いいえ」のどちらかに印を付けます。
前の会社との関係が気になる人は、この欄を書く前に、どちらを選ぶかを決めておいてください。
Cさんが書く内容
Cさんの場合、年分は2026年分、事業主はA社です。在職期間には、A社に入社した日から6月30日までを書きます。収入金額と源泉徴収税額は、1月から6月までの給与明細を合計した額です。
これまでの経緯には、A社にメールで交付を頼んだ日と、その返事の内容を書きます。電話した日があれば、相手の名前と回答もあわせて書きます。
Q 年末調整に間に合わなかったら
確定申告で、自分で精算します。
No.2674のとおり、B社は前職分を確かめられないと年末調整ができません。前職の票がそろわないまま年が明けた場合、Cさんは翌年の確定申告で、A社とB社の給与をまとめて申告します。
確定申告が必要かどうか迷う人は、確定申告3問診断で先に当たりを付けられます。
納めすぎなら5年さかのぼれる
年の途中で辞めて年末調整を受けなかった人は、所得税を納めすぎている場合があります。国税庁タックスアンサーNo.2030は、この場合を還付申告の具体例の1つに挙げています。
還付申告書は、確定申告の期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間出せます。2026年分なら、2027年1月1日から出せます。
ただし、もともと所得税が引かれていなかった人は、申告しても戻る税金はありません。源泉徴収票の「源泉徴収税額」の欄が0円なら還付はない、と国税庁は説明しています。
Q 今年はほかの会社で働いていない場合
前の会社を去年のうちに辞め、今年は給与を受け取っていない人は、今年の年末調整に前職の票は関係しません。
No.2674が今の会社に確認を求めているのは、「その年中に」ほかの会社から受け取った給与です。たとえば2025年12月に退職し、最後の給与も2025年中に受け取っていたとします。この場合、2026年の年末調整に入るのは今の会社の給与だけです。
退職後に支払われた給与がある人は、支払われた年がいつかで判断が変わります。B社の担当者に聞かれたら、最後の給与が振り込まれた日を答えられるようにしておきます。
前職で申告書を出していなかった場合
No.2674は、年末調整に含めるのは、ほかの会社に「扶養控除等(異動)申告書」を出して受け取った給与だと書いています。前職で申告書を出していなかった人は、前職の給与の扱いが変わるため、B社の担当者に早めに伝えてください。
Q 入社が遅いと控除は減るのか
減りません。年の途中で入社しても、基礎控除や扶養控除などは全額使えます。
No.2674は、たとえば4月に就職した人でも、働いた月数に応じて控除を割り引く計算はしないと書いています。8月入社のCさんも、控除は1年分です。
前職の票が届かないまま確定申告に回すと、年末調整なら会社がしてくれた計算を自分ですることになる。 控除を受け損ねないためにも、まずは11月中に票をそろえることを目指してください。
今日からやることの順番
Cさんの立場で、10月下旬から動く順番をまとめます。
- 前職の給与システム・メール・郵便物を確かめ、票が届いていないかを見る
- 届いていなければ、前職の人事・総務にメールで交付を頼む(日時・相手・回答を記録)
- B社の担当者に「前職の票を催促中」と伝え、社内の締め切りを確かめる
- 退職後1か月の期限を過ぎて、催促しても来なければ、税務署に不交付の届出書を出す
- 年末調整に間に合わなければ、翌年に確定申告で精算する
確定申告になると、前職と今の会社の給与に加え、医療費やふるさと納税などの控除もまとめて自分で入力します。家計簿と確定申告を同じサービスで管理しておくと、領収書や明細を探す手間が減ります。
あわせて読みたい
参考情報
いずれも2026年10月21日に本文を確認しました(タックスアンサーは「令和8年4月1日現在法令等」の版)。
- 国税庁「No.2674 中途就職者の年末調整」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2674.htm
- 国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm
- 国税庁「No.7411 『給与所得の源泉徴収票』の提出範囲と提出枚数等」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7411.htm
- 国税庁「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100017.htm
- 国税庁「『源泉徴収票不交付の届出書』を提出される前に、ご確認ください。」(PDF) https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/pdf/0023005-034.pdf
- 国税庁「No.2030 還付申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
Cさんは計算と説明のために置いた架空の人物です。前職の給与の扱いや申告の要否は、個別の事情で変わります。迷う場合は、今の会社の担当者か所轄の税務署に確認してください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。