地震保険の控除、共有名義の家でも払った人が全額
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年末調整の書類に「地震保険料」の欄があり、家を共有名義で買った夫婦はどちらが書くのか迷いがちです。結論は、保険料を実際に払った人が、地震保険の部分を全額書けます。家が夫婦の共有名義でも、生計を一にする配偶者の持ち分は控除の対象に含まれるからです。
一方で、火災保険の部分は控除の対象外です。引渡し前に払った保険料が「去年の分」にならない落とし穴もあります。この記事では架空のモデル世帯を1組置き、年末調整の書類を書くまでの判断を順に追います。
モデル世帯の前提
例として、次の30代夫婦を考えます。実在の家庭ではなく、計算のために置いた架空の世帯です。
- 夫:34歳の会社員。課税所得は約300万円で、所得税率は10%
- 妻:32歳の会社員。課税所得は約150万円で、所得税率は5%
- 住まい:2026年1月に引渡しを受けた戸建て。持ち分は夫婦で2分の1ずつ
- 保険:火災保険と地震保険をセットで契約。契約者は夫で、保険料は夫の口座から年1回引き落とし
- 金額(仮の数字):1年分の保険料のうち、火災保険が2万円、地震保険が3万2,000円
10月下旬、夫婦のもとに保険会社から控除証明書が届きました。勤務先からは、11月中に年末調整の書類を出すよう言われています。
判断1 対象は地震保険の部分だけ
最初に確かめるのは「どの金額が控除になるか」です。国税庁の説明では、控除の対象は地震等による損害部分の保険料に限られます。
- 火災保険の部分(2万円):対象外
- 地震保険の部分(3万2,000円):対象
火災保険料の控除は、かつて「損害保険料控除」として存在しました。ところが平成18年の税制改正で、平成19年分から廃止されています。セットで払っていても、申告書に書くのは証明書の「地震保険料」の金額だけです。
控除の上限は、所得税で5万円です。地震保険料が5万円以下なら全額、5万円を超えると一律5万円になります。モデル世帯の3万2,000円は、全額が控除の対象です。
2006年までの長期契約がある人
平成18年12月31日までに結んだ長期の損害保険は、経過措置で対象になることがあります。条件は次の3つをすべて満たすことです。
- 保険期間が10年以上で、満期返戻金などがある
- 平成19年1月1日以後に始まった契約ではない
- 平成19年1月1日以後に契約を変更していない
この「旧長期損害保険料」の控除は、所得税で最高1万5,000円です。地震保険料と合わせた上限は5万円になります。2026年に家を買った30代の世帯では、まず当てはまりません。
判断2 共有名義でも払った夫が全額
次に「夫婦のどちらが書くか」です。国税庁の説明では、控除を受けるのは保険料を支払った人です。モデル世帯で払っているのは夫なので、夫の年末調整で申告します。
迷いやすいのは、家の持ち分が半分ずつの点です。控除の対象になる家は、自分だけでなく生計を一にする配偶者や親族が持つ家も含みます。条件は、常に住んでいる家であることです。
- 夫の持ち分(2分の1):自分の家なので対象
- 妻の持ち分(2分の1):生計を一にする配偶者の家なので対象
このため、夫は地震保険料3万2,000円を全額申告できます。持ち分に合わせて半分ずつ分ける必要はありません。分けるのは「誰が払ったか」で、名義の割合ではないと覚えておくと迷いません。
妻が書けるのは妻が払ったときだけ
妻の年末調整に同じ保険料を書くことはできません。妻は保険料を払っていないからです。同じ保険料を夫婦の両方で申告すると、二重の控除になります。
家財の地震保険も同じ扱い
控除の対象には、家だけでなく家財も入ります。国税庁は「生活に通常必要な家具・じゅう器・衣服など」と説明しています。家財の地震保険を付けている人は、建物の分と合計して上限5万円の中で申告します。
建物は夫・家財は妻が払う場合
建物と家財で、保険料を払う人が分かれている夫婦もいます。この場合は、払った分をそれぞれの年末調整に書きます。たとえば次のような分け方です。
- 建物の地震保険料3万2,000円:夫の口座から払う → 夫が申告
- 家財の地震保険料1万2,000円:妻の口座から払う → 妻が申告
家財は夫婦で使う家具や家電なので、妻にとっても「自分または生計を一にする配偶者が持つ生活用の家財」に当たります。夫が家財の分まで書くと、払っていない保険料を申告することになります。同じ家の保険でも、払った人ごとに書くのが原則です。契約者と払う人が違う場合は、引き落とし口座の名義で支払いを説明できるようにしておきます。
判断3 引渡し前の支払いは翌年の分
モデル世帯には、もう1つ確かめることがあります。保険料を払った日と、補償が始まった日がずれているのです。
- 保険料を払った日:2025年12月(引渡し前に一括で手続き)
- 補償が始まった日:2026年1月(引渡しの日)
国税庁の通達では、補償が始まる日より前に払った地震保険料は、補償が始まった日に払ったものとして扱います。このため、2025年12月に払った保険料は2026年分の控除になります。
夫が「去年払ったから、もう関係ない」と考えると、2026年の年末調整で書き漏れます。逆に2025年分の申告に入れていたなら、年を取り違えています。新築や購入の年は、証明書の保険期間の開始日を見て、どの年の分かを決めるのが確実です。
まとめて払った人は証明書の金額で
保険期間が1年を超える契約で、保険料を前もってまとめて払う人もいます。この場合は自分で割り算をせず、証明書に書かれた控除の対象額を確かめます。金額の意味がわからなければ、書類を出す前に保険会社へ問い合わせます。
税はいくら軽くなるか
控除で軽くなる税は、控除額に税率をかけて目安を出せます。所得税には2026年分も復興特別所得税(所得税額の2.1%)が上乗せされます。住民税の地震保険料控除は、支払額の2分の1で上限2万5,000円です。住民税の所得割の税率は10%として計算します。
| 項目 | 夫が払った場合 | 仮に妻が払った場合 |
|---|---|---|
| 所得税の控除額 | 3万2,000円 | 3万2,000円 |
| 所得税の軽減(復興税込み) | 約3,267円(10.21%) | 約1,634円(5.105%) |
| 住民税の控除額 | 1万6,000円 | 1万6,000円 |
| 住民税の軽減(10%) | 1,600円 | 1,600円 |
| 合計の目安 | 約4,867円 | 約3,234円 |
(税率は国税庁の所得税の速算表、住民税の扱いは自治体の案内で確認。最終確認日:2026-10-18)
所得税の分は、年末調整で精算されます。住民税の分は、翌年6月からの住民税が下がる形で効きます。表の数字は控除額に税率をかけただけの概算です。実際の金額は、ほかの控除や端数の処理で前後します。
税率の高い人が払うほど軽くなる税は増えます。ただし、申告する人だけを入れ替えることはできません。来年から払う人を変えるなら、引き落とし口座を変えるなど実際の支払いを変える必要があります。
上限の5万円を超えるとき
建物と家財の両方に地震保険を付け、1人で払うと上限に届くことがあります。例として、夫が建物4万円と家財2万円の合計6万円を払ったとします。
- 所得税の控除額:6万円は5万円を超えるので、一律5万円
- 住民税の控除額:支払額が5万円を超えるので、一律2万5,000円
- 税率10%の夫の軽減:所得税は約5,105円、住民税は2,500円
6万円のうち上限を超えた1万円分は、どこにも書けません。夫婦それぞれに支払いを分けている世帯なら、上限は1人ごとに5万円です。ただし、上限を使い切るために支払いの名義を書類の上だけで変えることはできません。
在宅副業の部屋があるとき
モデル世帯の妻が、自宅の1室を副業の作業場として使い始めたとします。この場合は、家の使い方を確かめます。
国税庁の通達では、住まいと事業の両方に使う家は、住まいとして使う部分だけが控除の対象です。ただし、家全体のおおむね90%以上を住まいとして使っているなら、保険料の全額を対象にしてよいとされています。
作業場が1室だけでも、家全体に占める割合で確かめます。住まいの部分が90%未満になる人は、保険料のうち住まいの割合だけを申告します。在宅の副業で家賃や光熱費を経費にする考え方は、在宅副業の家賃は経費?家事按分の3つの誤解で整理しています。
書類を書く日にすること
夫が年末調整の「保険料控除申告書」に書く内容は、次のとおりです。国税庁の2026年分の様式では、地震保険料の欄に次の項目があります。
- 保険会社等の名称と、保険等の種類(目的)
- 保険期間
- 保険等の契約者の氏名
- 保険の対象の家に住む人、または家財を使う人の氏名
- 「地震」か「旧長期」かの区分に○を付ける
- 本年中に払った保険料のうち、その区分の金額
4番の欄の書き方は、国税庁が公表している記載例のPDFで確かめられます。控除額は「地震保険料の合計」と「旧長期損害保険料から計算した額」を足し、最高5万円です。証明書は申告書と一緒に勤務先へ出します。
年末調整に間に合わなかったら
証明書が見つからず、年末調整に間に合わないこともあります。その場合は確定申告で地震保険料控除を受けられます。払いすぎた税を取り戻す還付申告は、対象の年の翌年1月1日から5年間出せます。
ほかに医療費控除や副業の所得がある人は、確定申告がまとめて必要になる場合もあります。自分が申告の対象かどうかは、確定申告3問診断で確かめられます。
同居の親の家に住んでいる人
親が持つ家に同居し、生計を一にしている人もいます。この場合、家は「生計を一にする親族が持つ家」に当たります。保険料を払っているのが自分なら、自分の申告で控除を受けられます。別々に暮らす親の家の保険料を払っている場合は、生計を一にしているかで判断が分かれます。迷ったら、書く前に税務署の電話相談で確かめます。
モデル世帯の結論
モデル世帯の夫婦がたどり着いた答えは、次の3点です。
- 申告するのは夫で、地震保険料3万2,000円を全額書く。火災保険の2万円は書かない
- 2025年12月に払った保険料は、補償が始まった2026年の分として申告する
- 軽くなる税は合計で約4,867円。所得税の分は年末調整で戻り、住民税の分は翌年6月から下がる
名義ではなく「誰が払ったか」と「いつ補償が始まったか」。この2点を証明書で確かめれば、地震保険の欄で迷うことはほとんどありません。
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参考情報
- No.1145 地震保険料控除|国税庁(令和8年4月1日現在法令等。確認日:2026-10-18)
- No.1146 地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約|国税庁(確認日:2026-10-18)
- 所得税基本通達 法第77条《地震保険料控除》関係|国税庁(77-2・77-3・77-6。確認日:2026-10-18)
- 令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書(PDF)|国税庁(確認日:2026-10-18)
- No.2260 所得税の税率|国税庁(確認日:2026-10-18)
- No.2030 還付申告|国税庁(確認日:2026-10-18)
- 地震保険料控除(住民税)|練馬区(確認日:2026-10-18)
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