家計管理

火災保険、次の更新で10年契約は選べない

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2016年にマイホームを買って、住宅ローンと一緒に火災保険を10年契約で組んだ。あの時「10年分まとめて払っておけば当分考えなくていい」と言われて、実際その通りに10年が過ぎた——という家庭が、いま次々に満期を迎えています。

先に結論を書きます。その10年契約は、もう同じ形では組み直せません。2022年10月1日以降に始まる火災保険の契約期間は、最長5年に短縮されているからです。しかも保険料の元になる「参考純率」は2019年以降だけで3回引き上げられており、次の更新通知に並ぶ金額は、10年前とはまるで別物になっている可能性があります。

この記事では、更新の案内が届いたときに多くの人がつまずく3つの思い込みを、順番に外していきます。(制度・料率の最終確認日:2026-08-24)

思い込み1:「同じ内容で、また10年で更新すればいい」

火災保険の契約できる期間は、この10年ほどで二段階に短くなりました。

  • 2015年9月30日まで:最長36年
  • 2015年10月1日から:最長10年
  • 2022年10月1日から:最長5年

つまり、10年契約を選べたのは2015年10月から2022年9月末までに始まった契約だけです。2016年に10年で契約した家は2026年に満期を迎えますが、そこで選べる最長期間は5年になります。

「まとめて長く」という節約手段そのものが、制度側で半分に削られたと考えたほうが実態に近いです。

短縮された理由は、保険会社の都合というより自然災害の予測しづらさにあります。台風や豪雨による支払いが想定を超える年が続き、10年先の損害を見積もったまま料率を固定するのが難しくなった。だから期間を短くして、こまめに見直せるようにした——という流れです。

家計への影響は2つあります。

1つは、長期一括払いの割引が効く年数が減ること。5年分をまとめて払う長期一括払いには割引がありますが(割引率は保険会社ごとに異なります)、10年分をまとめた時ほどの効き幅は期待できません。

もう1つは、見直しの機会が5年ごとに来ること。これは悪い話ばかりではありません。家族構成も家の使い方も5年で変わります。ただし「自動更新のまま放置」を10年ではなく5年ごとに繰り返すと、そのたびに上がった料率をそのまま受け入れることになります。

思い込み2:「参考純率が13%上がったなら、保険料も13%上がる」

ここが一番誤解されやすい部分です。

保険料の目安になる「参考純率」は、損害保険料率算出機構という組織が算出しています。直近の改定は2023年6月21日に金融庁長官へ届出、6月28日に適合性審査結果通知を受領したもので、住宅総合保険等の全国平均で13.0%の引き上げ。過去最大の上げ幅でした。損保各社はこれを踏まえて商品改定を行い、多くは2024年10月1日以降に始まる契約から反映しています。

その前の改定も並べると、次のようになります。

改定全国平均の引き上げ率
2019年10月適用4.9%
2021年6月届出(2022年10月適用)10.9%
2023年6月届出(2024年10月適用)13.0%

この3つを単純に掛け合わせると1.049×1.109×1.130で約1.31倍(筆者試算)。10年前の感覚のまま更新通知を開くと、桁の印象が変わって見えるのはこのためです。

ただし、参考純率の上昇率と、あなたの保険料の上昇率は一致しません。理由は2つあります。

理由1:参考純率は保険料の一部でしかない。 実際の保険料は、保険金の支払いに充てる「純保険料」に、保険会社の事業費などにあたる「付加保険料」を足して決まります。参考純率が動くのは前者だけで、後者は各社が独自に決めています。また、参考純率を各社が採用するかどうか、どこまで反映するかも各社の判断です。

理由2:上げ幅が地域と建物で大きく違う。 2023年の改定では水災(洪水・高潮・土砂災害など)の料率が全国一律から5区分に細分化されました。市区町村単位で、保険料が最も安い「1等地」から最も高い「5等地」までに分かれます。木造・築10年以上の水災参考純率の改定率は、公表されている例で次の通りです。

水災等地水災部分の改定率
1等地+5.2%
2等地+9.0%
3等地+13.0%
4等地+17.3%
5等地+22.2%

細分化しなかった場合と比べると、1等地は約6%低く、5等地は約9%高くなり、その差は約1.2倍とされています。

同じ「全国平均13%」の中に、ほとんど上がらない家と2割以上上がる家が同居している、というのが実態です。自宅がどの等地かは、損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で市区町村単位で確認できます。更新通知の金額を見る前に、まずここを見ておくと納得感が違います。

なお、2026年10月にさらなる改定があるという説明を見かけますが、2026年8月24日時点で損害保険料率算出機構の火災保険参考純率のページに2026年改定の記載は確認できませんでした。確定情報として扱わないほうが安全です。予定を前提に慌てて契約するのではなく、公式の発表を確認してから動いてください。

思い込み3:「水災補償はどうせ使わないから、外せば安くなる」

保険料を下げる手段として真っ先に候補に挙がるのが水災補償です。実際、外せば保険料は下がります。問題は、外していい家とダメな家がはっきり分かれることです。

外す判断がしやすいのは、たとえばマンションの高層階で、家財も上の階にあるようなケースです。浸水で床上まで水が来る可能性が低く、被害の想定額も小さくなります。

逆に慎重になるべきなのは、戸建て、1階住戸、地下駐車場のある建物、河川や低地の近くです。床上浸水や土砂災害は修理費が大きくなりやすく、外していれば保険金はゼロです。上で触れた水災等地は市区町村単位のざっくりした区分なので、等地が低いことと、自宅が安全であることはイコールではありません。自治体のハザードマップで、自宅の地点を直接確認してください。

削るなら、水災より先に検討できる余地があります。

  • 家財の保険金額が実態と合っているか。新築時にすすめられた金額のまま10年経っていることは珍しくありません。子どもが独立した後なら、家財の総額は当時より減っている家もあります。
  • 免責金額(自己負担額)を上げる。少額の修理は自腹で持つ代わりに、保険料を下げる考え方です。
  • 重複している補償がないか。個人賠償責任は自動車保険やクレジットカードの付帯で持っていることがあり、二重に払っている場合があります。

「補償を薄くして安くする」のと「重複と過大を削って適正化する」のは、別の作業です。 先にやるべきは後者です。

試算:同じ家でも、等地が違うと差はこう開く

数字の感覚をつかむために、架空の前提で計算してみます(実在の商品・実際の保険料ではなく、公表されている改定率を使った筆者の試算です)。

前提:木造戸建て・築10年以上・現在の年あたり保険料が5万円で、そのうち水災部分が1万5,000円、それ以外(火災・風災・破損など)が3万5,000円だとします。ここに2023年改定の水災改定率だけを当てはめると、水災部分は次のようになります。

水災等地水災部分(改定前1万5,000円)増える額
1等地約1万5,780円約780円
3等地約1万6,950円約1,950円
5等地約1万8,330円約3,330円

1等地と5等地では、水災部分だけで年2,500円ほどの差がつきます。5年契約ならその5倍です。額そのものより、「自分の家がどちら側なのかを知らずに更新している」ことのほうが問題です。

なお、この試算は水災部分にしか改定率を当てていません。実際の更新見積もりには、水災以外の補償の改定、築年数の経過、建物評価額の見直し、各社の付加保険料の変更が同時に乗ります。通知書の金額をこの計算で説明しきることはできない、という前提で見てください。

見積もりを比べるときにそろえる4項目

複数社の見積もりを取るとき、条件がずれたまま金額だけを比べると必ず判断を誤ります。最低限そろえるのは次の4つです。

  1. 建物の保険金額(再調達価額か時価か、いくらか)
  2. 家財の保険金額(そもそも付けるか、いくらにするか)
  3. 水災の有無(片方だけ外した見積もりを混ぜない)
  4. 免責金額(0円と5万円では保険料が変わります)

この4つが同じであれば、残った差額は各社の付加保険料と割引の差です。**比べるべきは「安さ」ではなく「同じ条件での安さ」**で、ここを合わせずに乗り換えると、安くなった理由が補償の穴だった、ということが起こります。

上がった分を、どこから出すか

ここまでを整理すると、更新の案内が届いたときにやることは3つです。

  1. 満期日と、次に選べる期間を確認する。10年契約だった人は、最長5年になります。
  2. 水災等地とハザードマップを見る。水災を外す・残すの判断材料は、通知書ではなくこの2つにあります。
  3. 家財の金額・免責・重複補償を見直す。補償を薄くする前に、過大な部分を削る。

そのうえで、それでも保険料が上がる分は家計のどこかから出すことになります。火災保険だけを見て判断すると、生命保険や医療保険との重複、通信費や電気代の見直し余地を見落としがちです。保険は1本ずつ見ると高く、全部並べると重複が見えるというのが、固定費見直しでよくある構図です。

自分で全部並べるのが面倒、あるいはどこから手を付ければいいか分からない場合は、家計全体を一度プロと棚卸しする方法もあります。

住宅ローンの金利も動いている時期です。保険料と返済額を別々に眺めていると全体像がつかめないので、あわせて変動金利が上がった今、住宅ローンは動くべきかも確認しておくと判断しやすくなります。

まとめ:期間が半分になったことを、まず認識する

火災保険の更新でつまずくのは、金額そのものより「前提が変わったことを知らないまま比べてしまう」ことです。10年契約は選べない。参考純率は上がったが上昇率はそのまま保険料に乗るわけではない。水災は外せるが外していい家は限られる。この3つを押さえたうえで見積もりを並べれば、比べる土俵がそろいます。

満期の2〜3か月前に通知は届きます。届いてから考えるのではなく、届く前に水災等地とハザードマップだけでも見ておく。それだけで、更新の判断はかなり楽になります。

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参考情報

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。保険料・契約条件は保険会社や契約時期によって異なりますので、最新の内容は各保険会社および公式サイトでご確認ください。