家計管理

時短の社会保険料、2027年から翌月に下がる

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時短勤務に切り替えた月から、給与明細の「支給」欄はすぐに減ります。ところが「控除」欄の健康保険料と厚生年金保険料は、しばらく前と同じ金額のまま引かれ続けます。この差が埋まるのは、早くても4か月目です。

厚生労働省が2026年7月31日付で出した通知により、この3か月のズレを解消できる特例が2027年1月から始まります。療養・育児・介護のために働き方を調整して報酬が急減した人は、報酬が減った月の翌月から標準報酬月額を改定できるようになります。

ただし、保険料が早く下がるということは、その金額で計算される他の給付も早く下がるということです。この記事では、何がどれだけ変わるのかを金額で確認します。

なぜ、いまは4か月目まで下がらないのか

社会保険料は、実際の給与額そのものではなく「標準報酬月額」という区切りのいい金額に当てはめて計算されます。この標準報酬月額が年度途中で変わるのが「随時改定」で、成立するには3つの条件がそろう必要があります。

  • 基本給や手当など、固定的賃金に変動があったこと
  • 変動した月から3か月間の報酬の平均が、いまの標準報酬月額と2等級以上ずれること
  • その3か月とも、支払基礎日数が原則17日以上あること

問題は2つ目です。3か月分の平均を見るという設計上、どうしても3か月待たないと判定できません。実際に改定されるのは4か月目からになります。

時短勤務に切り替えて手取りが月4万円減った人でも、保険料は3か月間フルタイム時代の水準で引かれ続ける。育児や介護、あるいは自分の治療と仕事を両立しようとしている、いちばん家計が苦しい時期にこれが起きます。

厚生労働省の通知も、この点を「報酬が急減した場合であっても、通常の随時改定の取扱いによる場合、標準報酬月額が改定されるまでには、固定的賃金の変動があった月から3か月を要する」と明記したうえで、特例をつくる理由に挙げています。

2027年1月から使える特例の中身

新しい特例は、通常の随時改定とは別枠の取扱いとして整理されました。使えるのは、次の3つをすべて満たす場合です。

  1. 療養・育児・介護と仕事を両立するための就労調整であること。 通知が定義する療養は、本人の治療だけでなく「家族の傷病の治療等に伴い看護等の必要な対応をする場合」も含みます。育児は小学校就学前の子の養育、介護は要介護・要支援認定を受けた家族の介護です
  2. その調整で標準報酬月額が2等級以上下がり、その状態が3か月以上続く見込みであること
  3. 本人が書面で同意していること

条件を満たすと、固定的賃金の変動があったかどうかにかかわらず、報酬が減った初月の報酬額をそのまま新しい標準報酬月額として、翌月から改定できます。3か月の平均を待つ必要がありません。

注意したいのは、届け出るのが会社だという点です。事業主が「被保険者報酬月額変更届(特例改定用)」に本人の同意書を添えて年金事務所(健康保険組合に加入している場合は組合にも同時に)提出します。自分で申し込む窓口はありません。会社が制度を知らなければ、そのまま使われずに終わります

なお、報酬が減った初月にまったく勤務せず報酬がゼロだった場合、その月は対象外です。あくまで「働きながら両立している人」のための特例だからです。時短が終わって報酬が2等級以上戻ったときも、届け出て速やかに戻す決まりになっています。

保険料はいくら早く下がるのか

標準報酬月額が30万円から22万円に下がるケースで考えます(間に24万円・26万円・28万円の区分があるため、4等級の低下にあたります)。

厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、本人負担はその半分の9.15%です。

標準報酬月額厚生年金保険料(本人負担)
30万円27,450円
22万円20,130円
7,320円

この7,320円が、3か月早く下がります。厚生年金だけで約2万2千円。健康保険料は加入している健保組合や都道府県で率が違うので一律には出せませんが、本人負担はおおむね給与の5%前後なので、合わせると3か月で3万円台になる家庭が多いはずです。

(保険料率は2026年9月1日時点で確認したものです。健康保険料率は毎年度改定されるため、自分の加入先の最新の率を給与明細か健保のサイトで確認してください)

時短で減るのは収入だけでなく労働時間もです。時間あたりで見ると割に合っているのか合っていないのかは、意外と感覚とずれます。気になる人は実質時給計算機で、時短前と時短後の数字を並べてみてください。

早く下がると、一緒に減るもの

ここからが本題です。厚生労働省の通知は、特例を使う際に「標準報酬月額が減少するため、将来の年金給付が減少すること、傷病手当金及び出産手当金に影響が生じることについて、対象者に十分説明の上、予め同意を得ておく必要がある」と釘を刺しています。本人の書面同意が要件になっているのは、まさにこのためです

1. 将来の厚生年金

老齢厚生年金の報酬比例部分は「平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数」で計算されます。標準報酬月額が8万円低い状態が12か月続くと、

80,000円 × 5.481/1000 × 12か月 = 約5,262円

年額で約5,262円、この差が受給開始後ずっと続きます。1年だけなら小さく見えますが、時短が3年続けば年1万5千円強です。

2. 傷病手当金・出産手当金

どちらも「支給開始日以前の継続した12か月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 3分の2」が1日あたりの支給額です。標準報酬月額が8万円低い期間が12か月分まるごと入ると、

80,000円 ÷ 30日 × 2/3 = 約1,778円

1日あたり約1,778円減ります。産前産後98日分なら、出産手当金だけで約17万4千円の差です。第二子の産休が1年以内に控えている人が、目先の保険料のために標準報酬月額を早く下げると、あとで大きく戻ってきます。

3. 一方で、下がって助かるもの

標準報酬月額は高額療養費の自己負担限度額の区分にも使われます。年収区分が下がれば1か月の医療費の上限も下がるため、治療を続けながら働いている人にとってはここは有利に働きます。この点は厚生労働省の説明にも明記されています。

育児なら、年金は守れる

年金の減少については、育児のケースにかぎって既存の救済策があります。日本年金機構の「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(養育特例)」です。

3歳未満の子を養育している間に標準報酬月額が下がっても、養育開始月の前月の標準報酬月額で年金額を計算してもらえます。対象期間は養育開始月から子の3歳の誕生日がある月の前月まで。「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を、事業主を経由して提出します。

時短勤務 | 標準報酬月額を下げたときの影響

時短の理由によって、守られる範囲が違う

同じ「保険料が下がる」でも、年金への跳ね返り方は理由ごとに変わります

将来の厚生年金傷病手当金・出産手当金毎月の保険料
育児(3歳未満の子) 養育特例あり 養育特例で従前の額とみなせる 12か月平均が下がると減る 翌月から下がる
家族の介護 みなし措置なし × 下がった分だけ年金額も減る 12か月平均が下がると減る 翌月から下がる
本人・家族の療養 みなし措置なし × 下がった分だけ年金額も減る 12か月平均が下がると減る 翌月から下がる
  • ※養育特例は年金額の計算上のみなし措置です。保険料そのものと、傷病手当金・出産手当金は下がった標準報酬月額で計算されます
  • ※養育特例を受けるには「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」の提出が別に必要です

資産化計画

この申出書は、申出日の前月までの2年間はさかのぼって認められます。すでに時短勤務中で出し忘れている人は、いま出せば2年分は取り返せるということです。会社の担当者が忘れているケースは珍しくないので、心当たりがあれば人事に確認する価値があります。

介護と療養には、これに相当するみなし措置がありません。「保険料が早く下がる」と「年金が減る」を、天秤にかけて自分で決める必要があります

育休明けの人は、もともと別ルートがある

育児休業から復帰して時短にする場合は、2027年を待たなくても使える制度があります。「育児休業等終了時報酬月額変更届」です。

育休終了日に3歳未満の子を養育している人は、随時改定の条件を満たさなくても、育休終了日の翌日が属する月以後3か月の報酬の平均で、4か月目の標準報酬月額から改定できます。ポイントは、2等級ではなく1等級以上の差で足りること。時短の幅がそれほど大きくない人でも通ります。

つまり2027年からの新しい特例が本当に効いてくるのは、育休を挟まずに時短に入る人です。親の介護が急に始まった人、自分や家族の治療で勤務時間を落とす人、そして育休復帰後しばらくフルタイムで働いてから時短に切り替えた人。ここが、これまで制度の谷間になっていた層です。

決める前に、世帯の数字を並べる

この特例を使うかどうかは、「保険料が3か月早く下がる約3万円」と「将来の年金と手当の減り方」を並べて比べる話です。第二子の予定、時短がいつまで続くか、配偶者の収入、教育費の山がいつ来るか。ここが決まらないと、正解は出ません。

自分たちだけで組み立てるのが難しいと感じたら、家計の全体像を無料で相談できるサービスを使う手もあります。

いま動かせること

2027年1月まで待たなくても、今日できることが3つあります。

  1. 給与明細で自分の標準報酬月額を確かめる。 控除欄の厚生年金保険料を9.15%で割り戻せば、おおよその標準報酬月額が出ます
  2. すでに時短中で子が3歳未満なら、養育特例の申出書が出ているか人事に聞く。 出ていなければ、2年分はさかのぼれます
  3. 時短の予定があるなら、産休・育休の時期と重ならないか確認する。 手当金は直前12か月の平均で決まるため、順番を間違えると差が大きく出ます

よくある質問

Q. 特例を使うと、健康保険の傷病手当金はいつから減りますか。

支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均で計算されるため、下がった月がその12か月に入り始めた時点から、少しずつ影響します。下がった直後に受給が始まれば影響は1か月分だけですが、1年後だと12か月分すべてが低い額で平均されます。

Q. 会社が「そんな制度は知らない」と言った場合はどうすればいいですか。

届け出るのは事業主なので、本人だけでは手続きできません。厚生労働省が2026年7月31日付で健康保険組合理事長・日本年金機構理事長・全国健康保険協会理事長あてに出した通知(保保発0731第4号ほか)が根拠です。通知名を伝えたうえで、加入している健保組合や年金事務所に会社から確認してもらうのが早道です。

Q. 標準報酬月額を下げたくない場合、特例を断れますか。

断れます。本人が書面で同意していることが要件なので、同意しなければ適用されません。従来どおり4か月目からの随時改定になります。

Q. 時短が終わったら、保険料はすぐ元に戻りますか。

就労調整が終わって報酬が増え、標準報酬月額が2等級以上上がった場合は、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、事業主が速やかに届け出て報酬が増えた初月の額で改定することになっています。下げるときと同じスピードで戻る設計です。

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参考情報

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。