家計管理

4〜6月の給与で、10月の手取りが変わる


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7月10日は、会社が年金事務所に「算定基礎届」を出す期限でした。この書類が出た時点で、あなたが今年9月から来年8月まで払う健康保険料と厚生年金保険料は、もう決まっています。

決めたのは、4月・5月・6月に支払われた給与です。夏のあいだは何も変わりませんが、10月に振り込まれる給与で、はじめて金額が動きます。

手取りが減る月は、減る理由が分からないから怖いのです。 この記事では、4月の給与から10月の給与明細まで、時間軸に沿って一本道で追いかけます。

工程1:4月・5月・6月に「支払われた」給与が集められる

社会保険料のもとになるのは、標準報酬月額という区切りの金額です。これを毎年決め直す手続きを「定時決定」と呼びます。

日本年金機構によると、定時決定は毎年7月1日時点で在籍する被保険者について、同日前3か月間、つまり4月・5月・6月に受けた報酬をもとに行われます。基本給だけでなく、残業手当・通勤手当・役職手当なども含めた総支給額が対象です。

ここで最初のつまずきどころがあります。基準になるのは「働いた月」ではなく「支払われた月」です。 給与の締め日が月末で支払いが翌月25日という会社なら、4月・5月・6月に支払われるのは3月・4月・5月に働いた分です。年度末で残業が膨らみやすい3月の働き方が、そのまま秋以降の保険料に効いてくることになります。

なお、平均の対象になるのは、支払いの基礎になった日数(支払基礎日数)が17日以上ある月だけです(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)。

工程2:7月10日、会社が算定基礎届を提出する

3か月の平均額が出たら、会社はそれを等級表に当てはめ、算定基礎届として7月10日までに提出します。こちらから何かする場面はありません。

等級はある程度の幅でまとめられています。たとえば報酬月額が29万円以上31万円未満の人は、まとめて標準報酬月額30万円として扱われます。平均が29万5,000円の人も30万5,000円の人も、払う保険料は同じです。

ここが重要で、あなたが気にすべきなのは1円単位の平均額ではなく、等級の境目をまたいだかどうかです。 平均が30万9,000円なら据え置き、31万円ちょうどなら1段階上がる。この1,000円の差が、1年ぶんの保険料を左右します。

工程3:9月分の保険料から、新しい金額になる

定時決定で決まった標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの各月に適用されます。2026年の定時決定なら、2026年9月分から2027年8月分までが、この数字で固定されます。

途中で残業が増えても、ボーナスが多く出ても、原則としてこの間の月々の保険料は変わりません。裏を返せば、4月から6月の給与が高かった人は、そのあと残業がゼロになっても1年間は高い保険料を払い続けます。

工程4:10月に支給される給与で、はじめて手取りが動く

「9月分から変わる」のに、給与明細が変わるのは10月です。社会保険料は原則として前月分を当月の給与から差し引くため、9月分の保険料は10月に支給される給与から引かれます。9月の明細を見て「何も変わっていない」と安心した人が、10月になって急に手取りの減少に気づく、というのがこの仕組みです。会社によって控除のタイミングが違うこともあるので、9月支給分と10月支給分の明細を並べて「健康保険料」「厚生年金保険料」の欄を見比べるのが確実です。

いくら変わるのか、実額で見る

金額の感覚をつかむために、東京都の協会けんぽに加入している40歳未満の会社員を例に計算します。2026年度の東京支部の健康保険料率は9.85%、厚生年金保険料率は全国一律18.3%で、どちらも会社と本人で折半します(最終確認日:2026-07-27/協会けんぽ東京支部・日本年金機構の公表値)。

標準報酬月額が30万円だった人が、34万円の等級(2段階上)に上がったとします。

項目標準報酬月額30万円標準報酬月額34万円差額
健康保険料(本人負担)14,775円16,745円1,970円
厚生年金保険料(本人負担)27,450円31,110円3,660円
月の本人負担 合計42,225円47,855円5,630円
12か月ぶん506,700円574,260円67,560円

月5,630円、年にして6万7,560円。 これが、春の給与が2段階ぶん高かったことの代金です。

なお、この表には含めていない負担が2つあります。40歳以上の人は介護保険料(2026年度は全国一律1.62%)が上乗せされます。また2026年4月分からは、年齢にかかわらず子ども・子育て支援金(全国一律0.23%)の徴収も始まっています。実際の負担は、上の表よりやや大きくなると考えてください。

住民税もほぼ同じ構造で、前年の所得が今年の負担として遅れてやってきます。あわせて6月に上がった住民税と値上げのWパンチをどう乗り切るかも読んでおくと、年間の資金繰りが立てやすくなります。

上がるのは、本当に損なのか

標準報酬月額は、受け取る側の金額も決めています。下がれば負担は減りますが、もらえる額も減ります。

厚生年金の将来の受取額。 老齢厚生年金の報酬比例部分は、おおまかに「平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数」で計算されます(2003年4月以降の期間)。標準報酬月額が1年間だけ4万円高かった場合の増加分は、40,000円 × 5.481/1000 × 12か月で年およそ2,631円。これが受給開始後ずっと続きます。

正直に言えば、この年2,631円で本人負担の増加分6万7,560円を取り戻すには25年以上かかる計算です。65歳から受け取り始めるなら90歳前後。「年金が増えるから得」と単純に言えるほど、回収は早くありません。 実際の年金額は再評価率やマクロ経済スライドで調整されるため、これは仕組みを示す概算です。

病気やケガで休んだときの傷病手当金。 協会けんぽの傷病手当金は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2が1日あたりの支給額になります。標準報酬月額30万円なら日額はおよそ6,667円、34万円ならおよそ7,556円。1か月休むと2万7,000円ほどの差です。出産手当金も同じ計算方法です。

つまり標準報酬月額を下げるのは、「今の手取りを増やし、休んだときと老後の受取を減らす」取引です。どちらが正解かは、家計のいまの体力で変わります。

「4〜6月の残業を減らす」がうまくいかない3つの理由

この時期になると「4月から6月は残業を減らせ」という話が必ず出ます。ただ、実行しようとすると壁にぶつかります。

第一に、工程1で見たとおり基準は支払われた月です。多くの会社では、4月・5月・6月に支払われるのは3月・4月・5月の残業ぶん。年度末で最も忙しい3月の残業を削れという話になり、現実味がありません。

第二に、残業時間は自分だけでは決められません。繁忙期の割り振りも締切も、たいていは自分の外側にあります。減らせる立場の人しか使えない節約術です。

第三に、削った結果として下がるのは保険料だけではありません。残業代そのものが減ります。保険料の5,630円を惜しんで、残業代の4万円を捨てるのは本末転倒です。

現実的な線引きはこうです。等級の境目ぎりぎりにいて自分の裁量で調整できる人だけが意識する。それ以外の人は、調整しようとするより9月改定を家計の予定に先に織り込むほうが効きます。

途中で変わる例外もある:随時改定

年の途中で標準報酬月額が変わる仕組みが、随時改定(月額変更届)です。日本年金機構によると、当てはまるのは次の3つをすべて満たしたときで、改定は固定的賃金が変動した月から数えて4か月目からになります。

  1. 昇給または降給によって固定的賃金に変動があった
  2. 変動した月から3か月間の報酬の平均が、それまでの標準報酬月額と2等級以上ずれた
  3. その3か月とも、支払基礎日数が17日以上ある

ポイントは1つ目です。必要なのは基本給や手当といった固定的賃金の変動で、残業代の増減だけでは随時改定になりません。 春に昇給した人、異動で手当が変わった人、時短勤務に切り替えた人は、9月を待たずに保険料が動くことがあります。

秋までに、家計側でやっておくこと

改定そのものは止められません。やるべきは、10月に慌てないための準備です。

1. 4月・5月・6月の給与明細を並べ、総支給額の平均を出す。 通勤手当や残業手当も含めた額です。29万円以上31万円未満なら標準報酬月額は30万円、というように当てはめれば、9月からのおおよその水準が今の時点で分かります。

2. 10月からの毎月の予算を、今のうちに書き換えておく。 月5,000円前後の変動は、気づかないまま生活水準を維持すると、そのまま貯蓄額の減少になります。先に予算のほうを下げておけば、貯蓄は守れます。

3. 手取りが変わったら、時間あたりの実入りも計算し直す。 残業や副業に費やしている時間が実際いくらの時給になっているかは、実質時給計算機で確認できます。保険料が上がったあとの数字で見ると、印象が変わることがあります。

給与明細を毎回開いて手で記録するのが続かない人は、口座とカードを自動でつないで残高を見える化するほうが現実的です。

9月から翌年8月までの1年間、保険料は同じ金額で続きます。変えられないものは、早く知っておくほど怖くなくなります。 10月の給与明細を開く前に、4月から6月の3枚を見返しておいてください。

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参考情報

※制度の内容・料率は変更される場合があります。ご自身の加入する健康保険組合や勤務先の給与担当部署で、最新の内容をご確認ください。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。