家計管理

産休・育休のお金、入るのは4か月後

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産休・育休でもらえるお金の話は、「いくらもらえるか」ばかりが語られます。出産手当金は給与の3分の2、育児休業給付金は67%。数字だけ見れば、収入が急にゼロになるわけではないと安心できます。

けれど実際に産休に入った人がつまずくのは、金額ではなく入るタイミングのほうです。母親の場合、育児休業給付金の最初の入金は、出産日からおよそ4か月後になります。手続きが遅れれば5か月、6か月になることもあります。

つまり、給与の振込が止まってから最初の給付が着金するまで、4か月前後は「入ってこない期間」が続くということです。金額の話だけを信じて産休に入ると、この空白でカードの引き落としに詰まります。

この記事では、妊娠が分かってから育休に入り、最初の入金が届くまでを時間の順に追います。制度ごとの解説ではなく、「いつ何が起きて、いつ口座に着くか」の順で並べます。

妊娠中:出産費用は「差額だけ」を払う

最初にお金が動くのは出産のときですが、ここは意外と負担が軽く設計されています。

健康保険から出産育児一時金が出ます。産科医療補償制度に加入している医療機関で在胎週数22週以降に出産した場合、子ども1人につき50万円。在胎週数22週に達しなかった出産などは48.8万円です(全国健康保険協会の記載。最終確認日:2026-08-26)。

そして多くの医療機関では直接支払制度が使われていて、健康保険が病院へ直接支払います。窓口で払うのは、出産費用から50万円を引いた差額だけです。

ここで大きな現金が飛ぶわけではない、という前提を先に押さえておいてください。 家計が苦しくなるのは出産費用ではなく、このあとの入金の空白のほうです。

なお、産前産後休業と育児休業の期間中は、申し出により健康保険・厚生年金保険の保険料が免除されます。給与から天引きされていた社会保険料は止まります。これは後述する「手取り10割相当」の話につながります。

産前42日〜産後56日:出産手当金の対象期間に入る

産休は、出産予定日以前42日(多胎妊娠は98日)から、出産の翌日以後56日目までの範囲で会社を休んだ期間が対象になります。予定日より出産が遅れた場合、その遅れた期間も対象に含まれます。

1日あたりの金額は、標準報酬月額を平均した額を30で割り、それに3分の2をかけた額です。会社から給与が出ている場合、その日額が出産手当金の日額より少なければ差額が支給されます(全国健康保険協会)。

問題は、この期間中には振り込まれないことです。出産手当金は産後56日が過ぎてから、対象期間をまとめて申請するのが一般的な流れです。申請後に健康保険側の審査が入るため、振込は出産から3〜4か月後になることが多いとされています(この期間の目安は健康保険組合や申請時期によって変わります)。

つまり、産前6週間の給与が止まった時点から数えると、最初の入金までに半年近く空くケースもあり得ます。

出生日から58日目:ここから育児休業給付金に切り替わる

産後休業は出生日の翌日から8週間です。母親がそのまま育休に入る場合、育児休業開始日は出生日から起算して58日目にあたる日になります(厚生労働省のリーフレットに明記されています)。

育児休業給付金の額は、休業開始時賃金日額×支給日数×67%。育児休業の開始から181日目以降は50%に下がります。休業開始時賃金日額は、休業開始前6か月間に支払われた賃金の総額を180で割った額です。

ここで効いてくるのが、さきほどの社会保険料免除です。育休中は健康保険・厚生年金保険料が免除され、給与が出なければ雇用保険料の負担もなく、育児休業等給付は非課税です。だから額面の67%でも、手取りベースでは8割前後の感覚になります。

出生後8週間の28日間:80%になる枠がある

2025年4月に「出生後休業支援給付金」という上乗せが作られました。育児休業給付金の67%に13%が乗り、合計80%=手取り10割相当になる仕組みです。上乗せの対象は最大28日分です。

ただし、この28日は誰でも自動で付くものではありません。厚生労働省の資料では、次の2つを満たすことが要件とされています。

  1. 同一の子について、給付金の対象となる育児休業を対象期間内に通算14日以上取得していること
  2. 配偶者も、子の出生日(または出産予定日)から8週間を経過する日の翌日までの期間に通算14日以上の育児休業を取得していること。または「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当すること

2つ目が実務上の分かれ目です。母親が受け取るには、原則として父親側が生後8週間のうちに14日以上の育休を取っている必要があります。父親が取らなければ、母親の28日分の上乗せは付きません。

逆に、父親が受け取る側の場合は、配偶者(母)が子の出生日の翌日に産後休業中であることが「配偶者の育児休業を要件としない場合」に当たるため、この条件は自動的に満たされます。

「うちは手取り10割になるはず」と思っている家庭ほど、父親の育休日数を確認していません。 14日という数字は、産後の慌ただしさの中では意外と短くありません。

なお、母親の場合の対象期間は出生日(または出産予定日)から16週間を経過する日の翌日まで、父親の場合は8週間を経過する日の翌日までと、期間の長さが違います。

2026年8月に、上限額が改定された

給付の計算には上限があります。厚生労働省の「育児休業等給付の内容と支給申請手続(2026年8月版)」によれば、休業開始時賃金日額の上限額は16,540円、下限額は3,203円です(2027年7月31日までの額。最終確認日:2026-08-26)。

支給日数30日の場合の上限額・下限額は次のとおりです。

区分支給上限額支給下限額
育児休業給付金(給付率67%・30日)332,454円64,380円
育児休業給付金(給付率50%・30日)248,100円48,045円
出生後休業支援給付金(13%・28日)60,205円11,658円

上限に当たるのは、月給がおよそ50万円を超えるあたりからです。年収が高い世帯ほど、67%という数字から想像する額と実際の振込額がずれます。「額面の67%」ではなく「上限332,454円」で計算し直しておくと、想定が外れません。

いつ、いくら入るか:時系列で並べる

ここまでの流れを、出産日を起点にした時間軸で並べます。数字は厚生労働省・全国健康保険協会の資料に基づく制度上の日数で、実際の着金日は勤務先とハローワークの処理速度で前後します。

時期起きること入金
産前42日〜産休開始。給与の振込が止まるなし
出産日出産育児一時金50万円は病院へ直接支払窓口は差額のみ
出生日の翌日〜8週間産後休業。社会保険料は免除なし
出生日から58日目育児休業開始なし
産後56日経過後出産手当金を申請出産から3〜4か月後が目安
育休開始から約2か月後会社が初回の育休給付を申請まだなし
支給決定後 約1週間育児休業給付金の初回入金2か月分をまとめて

初回の入金が遅れるのは、手続きが雑だからではなく、制度がそう組まれているからです。厚生労働省の資料には、事業主が行う初回の支給申請は「原則として最初と次の2つの支給単位期間について行う」と書かれています。支給単位期間は育休開始日から1か月ごと。つまり2か月分がたまるまで申請できないわけです。

さらに、支給決定後の振込までに約1週間かかります。育休開始が出生日から58日目、そこから2か月で約118日、審査と振込を足すと、出産日からおよそ4か月というのが最短に近い線になります。

そして、この4か月は最短側の話です。初回申請の提出期限は「育児休業開始日から起算して4か月を経過する日の属する月の末日まで」とされています。会社が期限ぎりぎりに出せば、着金が出産から半年近くまで後ろにずれることも制度上は起こり得ます。

空く4か月を、どう埋めるか

やることは3つに絞れます。

1つ目は、産休に入る前に「4か月分の生活費」を現金で確保しておくこと。 投資に回している資金ではなく、普通預金にある現金です。毎月の支出が28万円なら112万円。ここは運用の話ではなく、資金繰りの話です。

2つ目は、引き落とし日の集中を崩しておくこと。 給与が入っていた月末を前提に組んだカード払いや保険料の口座振替は、入金が止まると一気に詰まります。産休に入る前に、引き落とし口座と支払日を1枚の表にして、残高が最も薄くなる月を特定しておきます。

3つ目は、会社の申請スケジュールを先に聞いておくこと。 初回申請を「2つの支給単位期間まとめて」出すのか、本人希望で1つの支給単位期間だけ先に出してもらうのか。厚生労働省の資料では、被保険者本人が希望する場合は1つの支給単位期間での申請も可能とされています。1か月分でも早く入れば、家計の底は浅くなります。

夫婦で口座が分かれていると、この「一番薄くなる月」が誰にも見えません。共働きの口座設計は共働き夫婦の家計管理|口座3つで貯まる仕組みを作る方法で整理しています。産休に入る前に、世帯全体の残高が1画面で見える状態を作っておくのが先です。

この記事の要点

産休・育休のお金は、金額の設計はよくできています。出産費用は一時金で相殺され、育休中は社会保険料が免除され、条件が合えば28日分は手取り10割相当まで届きます。

崩れるのは、そこではありません。制度が「2か月分たまってから申請」で組まれている以上、最初の空白は誰にでも来ます。 4か月分の現金を先に置いておくこと、引き落とし日の集中を崩しておくこと、会社の申請タイミングを聞いておくこと。この3つは、妊娠が分かった時点から準備できます。

金額の心配より先に、カレンダーを見てください。

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参考情報

制度の内容・金額は改定されることがあります。ご自身のケースについては、勤務先の担当部署、加入している健康保険、管轄のハローワークで必ずご確認ください。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。