130万円の壁、残業で超えても外れない?
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年末が近づくと、パートで働く配偶者から「今月はもうシフトを入れられない」と言われる。毎年その会話をしている家庭は多いと思います。130万円を12で割った月10万8,333円。この数字を超えないように、11月と12月の働き方を縮めてきた人は少なくないはずです。
先に結論を言います。2026年4月1日から、健康保険の扶養に入れるかどうかは「実際にいくら振り込まれたか」ではなく「労働契約でいくら払うと決めてあるか」で判定するようになりました。 契約上の年収が130万円未満なら、繁忙期にたまたま残業して実収入が超えても、それだけを理由に扶養から外されることはありません。
最終確認日:2026-08-28(日本年金機構・厚生労働省の公表資料で確認)
何が変わったのか:判定のものさしが入れ替わった
2026年3月までの実務は、直近の給与実績と今後の見込みを見て判断するやり方でした。だから「月10万8,333円を3か月続けて超えたら扶養から外れる」といった説明を、勤め先や健康保険組合から受けた人が多かったはずです。
2026年4月1日以降は、労働条件通知書や雇用契約書に書かれた賃金から見込まれる年間収入が基準額未満であり、かつ給与以外の収入が見込まれない場合、原則として扶養に該当するものとして取り扱われます。同居している家族なら「被保険者(扶養する側)の年間収入の2分の1未満であること」、別居なら「被保険者からの仕送り額より少ないこと」という条件も引き続き付きます。
ここで言う賃金は、労働基準法第11条の賃金です。基本給だけでなく、諸手当も賞与も含めて数えます。所定労働時間・所定労働日数から計算できるものが対象、という考え方です。
健康保険の扶養 | 130万円の判定
2026年4月で、何がどう変わったか
見るものが「実績」から「契約書」へ移りました
| 判定のもと | 繁忙期に残業した年 | |
|---|---|---|
| 2026年3月まで 従前の取扱い | △ 直近の給与実績と今後の見込み | △ 事業主の証明で継続できる場合あり |
| 2026年4月から 労働契約による判定 | ○ 労働条件通知書の賃金から見込む | ○ 社会通念上妥当な範囲なら変更不要 |
- ※契約期間が認定日から1年未満、労働時間や手当の額が不明確な場合は、この取扱いでの認定はできません
- ※給与以外の収入がある人は従前どおりの取扱いです
資産化計画
基準額は130万円だけではない
見落とされがちですが、扶養の基準額は年齢や状況で3種類に分かれています。
- 通常:年間収入130万円未満
- 19歳以上23歳未満:年間収入150万円未満
- 60歳以上、または障害者:年間収入180万円未満
大学生の子どもをアルバイトさせている家庭は、社会保険の側では150万円まで枠があるということです。税金の壁と社会保険の壁は別々に動いているので、片方の数字で両方を判断すると損をします。
「超えても外れない」の範囲はどこまでか
厚生労働省の通知には、実際の収入が基準額以上になった場合について「社会通念上妥当である範囲に留まる場合には、これを理由として、被扶養者としての取扱いを変更する必要はない」という趣旨の記載があります。
つまり、こういうことです。
- 契約上の年収が130万円未満であることが出発点。ここが崩れていれば、そもそもこの取扱いの対象外です
- その上で、契約に定めのない時間外労働が発生し、結果として年収が基準額を超えた
- その超え方が一時的で、常識の範囲に収まっている
この3つが揃えば、扶養のままでよい、という整理です。逆に言えば、毎月のように残業が固定化して、実質的に契約の中身が変わっているような状態は「社会通念上妥当な範囲」とは言いにくくなります。ここは加入している健康保険組合の判断が入る部分なので、微妙だと感じたら、超えてから相談するのではなく、増やす前に確認するのが安全です。
扶養から外れる3つの原因は、いまも残っている
判定方法が変わっても、外れる理由そのものが消えたわけではありません。よくあるのは次の3つです。
原因1:契約そのものを増やした
シフトを恒常的に増やす、時給が上がる、手当が追加される。これらは労働条件通知書の中身が変わるということなので、判定のもとが直接動きます。残業は許容されても、契約変更は許容されません。
原因2:給与以外の収入がある
フリマアプリの販売益、副業の報酬、不動産や年金の収入。これらがあると、労働契約による判定の対象から外れ、従前どおりの取扱いに戻ります。給与だけであることを本人が申し立てる書類も必要になります。
原因3:自分の勤め先で社会保険に入る側になった
2026年10月からは、短時間労働者を社会保険に入れる要件のうち「賃金月額8.8万円以上」がなくなり、週20時間以上働いているかどうかが実質的な入口になります。130万円に届いていなくても、勤め先の規模と労働時間の条件を満たせば、自分で健康保険と厚生年金に入ることになります。 こちらは扶養の話とは別の入口です。
扶養に留まるか、外に出るかをどう決めるか
判定が緩んだことで、「ぎりぎりまで働いて扶養に留まる」という選び方はやりやすくなりました。ただし、それが世帯にとって得かどうかは別の問題です。
社会保険に入れば保険料が引かれて手取りは一度落ちますが、厚生年金が上乗せされ、傷病手当金や出産手当金の対象にもなります。扶養に留まれば目先の手取りは守れますが、将来の年金額は増えません。どちらが正解かは、世帯の年齢・働ける年数・貯蓄額で変わるので、数字を並べないと決められません。
自分たちだけで比べるのが難しいときは、世帯単位で試算してくれる無料の相談窓口を使う手があります。
今週のうちにできる3つのこと
- 労働条件通知書を探す。 判定のもとになる書類です。手元になければ勤め先に再発行を頼みます。契約期間・所定労働時間・手当の額がはっきり書かれているかを確認してください
- 契約上の年収を自分で計算する。 基本給に諸手当と賞与を足し、通勤手当も含めて数えます。所得税では非課税の通勤手当も、健康保険の扶養判定では原則として収入に入ります。運用は健康保険組合ごとに細かく違うので、際どい人は加入先に確認を
- 時間あたりの手取りで比べる。 扶養を外れて働く選択肢を検討するなら、額面ではなく手取りベースで見ます。実質時給計算機で、増える保険料を引いた後にいくら残るかを出してみてください
よくある質問
Q. 2026年4月より前に扶養に入っている人も、新しい判定に切り替わりますか。
新しい取扱いは2026年4月1日以降に適用されます。多くの健康保険では年1回の被扶養者状況の確認(検認)があるので、そのタイミングで書類の求められ方が変わる可能性があります。案内が届いたら中身を読み飛ばさないでください。
Q. 契約書に残業代が「実績に応じて支給」としか書かれていません。この分は年収に入りますか。
労働契約の段階で金額を見込めない時間外労働の賃金は、契約から見込む年間収入には含まれない、という考え方です。ただし、手当の額が不明確だとこの取扱い自体で認定できないケースもあるため、書き方によって結論が変わります。加入先の健康保険に確認するのが確実です。
Q. 130万円を超えた月が1回だけありました。何か届け出は必要ですか。
契約上の年収が基準額未満で、超え方が一時的なら、それだけを理由に扶養を外す取扱いにはなりません。ただし判断するのは保険者(健康保険組合や協会けんぽ)なので、検認の際に説明を求められることはあります。給与明細は捨てずに残しておいてください。
Q. 夫婦どちらの扶養に入れるかで迷っています。
同居している場合、扶養に入る人の年間収入が「扶養する側の年間収入の2分の1未満」であることが条件です。共働きで収入が近いほどこの条件が効いてくるので、世帯の収入バランスから逆算して考える必要があります。
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参考情報
- 労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて|日本年金機構
- 労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて|厚生労働省
- 年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。