節税・税金

大学生の子のバイト、親の控除は159万まで満額

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夏休み。大学生の子どもがアルバイトのシフトを増やし、「今月こんなに稼いだ」とうれしそうに報告してくる。その一方で、親のあなたは去年こう言った記憶があるかもしれません。「103万を超えたら扶養から外れて、うちの税金が上がるからほどほどにね」と。

その一言、2026年(令和8年分)からは子どもの働く意欲に無用なブレーキをかけているかもしれません。2025年の税制改正で、大学生世代の子を持つ親のための控除が大きく組み替えられ、子の給与収入が150万円までなら親の控除は満額のまま、188万円まで段階的に残る仕組みに変わったからです。

ここでは、大学3年生の子を持つ一つの家庭を例に、「子にいくらまで働いていいと言うべきか」を、親の手取りへの影響まで含めて順番に追っていきます。(※登場する家庭は説明のための架空のモデルです。)

モデル世帯:会社員の父・世帯年収600万円、大学3年生(20歳)の子

例として、次のような家庭を考えます。

  • 父:会社員、給与収入600万円(この控除を使うのは父)
  • 母:パート、扶養の範囲内
  • 子:大学3年生・20歳。夏休みにカフェとイベント設営のバイトを掛け持ち中

この子は今年の年齢が「19歳以上23歳未満」に当てはまります。この世代の子は、親にとって税金の負担を軽くする力がもっとも大きい年代です。理由は、大学の学費や生活費で家計の出費がふくらむ時期だからで、国もそこに手厚い控除を用意しています。

問われているのは「扶養に入るか外れるか」の白黒ではなく、「控除がいくら残るか」というグラデーションです。 ここを取り違えると、稼げるのに稼がない、という損な選び方をしてしまいます。

かつての常識:「123万(旧103万)を1円でも超えたら親の控除がゼロ」

まず、なぜ多くの親が「稼ぎすぎるな」と言うのか、その理由を整理します。

これまで、19歳から22歳の子は「特定扶養親族」として、親に63万円の所得控除(所得税分)を与えていました。控除とは、税金の計算のもとになる金額を減らしてくれる仕組みで、63万円分が減れば、その分だけ親の所得税・住民税が安くなります。

問題は、この控除に「子の所得が一定額を超えたら、まるごと消える」という崖があったことです。かつては子の給与収入が103万円(その後の改正で123万円)を1円でも超えると、親の63万円の控除がゼロになりました。控除が消えれば、親の税負担は世帯によっては年10万円前後増えることもあります。

だから親は「103万(123万)を超えないで」と言い、子はシフトを断る——この行動は、当時としては合理的でした。でも、その前提はもう変わっています。

2026年からの新ルール:特定親族特別控除で「崖」が「坂」になった

2025年の税制改正で新しく作られたのが「特定親族特別控除」です。令和7年分(2025年分)の所得税から適用され、令和8年(2026年)以降も続きます(最終確認日:2026-08-11)。

ポイントは、これまでの「超えたら即ゼロ」の崖をなくし、子の収入が増えても控除がゆるやかに減っていく坂に変えたことです。国税庁の資料をもとに、子の給与収入(バイト代の年間合計)と、親が受けられる所得税の控除額を対応させると次のようになります。

子の給与収入(年間)親が受けられる所得税の控除額ひとことで言うと
150万円まで63万円(満額)ここまではフルに得できる
150万円超〜155万円61万円ほぼ満額。減りはわずか
155万円超〜160万円51万円ゆるやかに減り始める
160万円超〜165万円41万円まだ半分以上残る
165万円超〜170万円31万円
170万円超〜175万円21万円
175万円超〜180万円11万円
180万円超〜185万円6万円
185万円超〜188万円3万円わずかに残る
188万円超0円ここで初めて控除が消える

(控除額は子の「合計所得金額」の区分で決まります。上の表は、給与だけの子について、給与所得控除65万円を引いて所得に換算したうえで給与収入の目安に直したものです。区切りは目安なので、正確な判定は国税庁の資料と勤務先・税務署の案内でご確認ください。)

この表からわかる大事なことは2つです。1つ目は、子の給与収入が150万円までなら、親の控除は満額の63万円で1円も減らないこと。2つ目は、150万円を超えても控除は一気に消えず、188万円までは少しずつ残ることです。

つまり「103万を超えたら大損」という古い常識のまま子のシフトを止めているなら、それは稼げる分を捨てているのと同じなのです。

モデル世帯の結論:子には「150万までは気にせず働いていい」と言える

例の家庭に戻ります。大学3年生の子が夏と冬に頑張って、年間のバイト代が140万円になったとします。

かつての感覚なら「123万を超えた、親の控除が消えた」と青ざめる場面です。しかし新ルールでは、150万円までは控除は満額の63万円のまま。親の税金はまったく増えません。子は10万円ぶん多く稼げて、親の負担も変わらない——誰も損をしていません。

では、子がもっと稼いで年間160万円になったらどうでしょう。表を見ると、親の所得税の控除は63万円から51万円へ、12万円ぶん減ります。この12万円は「税金が12万円増える」という意味ではなく、「税金の計算のもとが12万円増える」という意味です。父の所得税率が10%なら、実際の所得税の増加はおおよそ1.2万円程度。子はそのぶん(140万→160万で)手取りを大きく増やしているので、家庭全体で見れば子が160万円まで働くほうが得になるケースが多いと言えます。

一方で忘れてはいけない別の壁があります。それは税金ではなく社会保険の壁です。子が勤め先で社会保険に自分で入る条件(勤務時間や会社規模など)を満たすと、子自身の給料から保険料が引かれ、手取りの伸びが鈍ります。また親の勤務先の健康保険の被扶養者から外れる収入基準(19歳以上23歳未満は年収150万円未満が目安)にも注意が必要です。税金の壁と社会保険の壁は別物で、基準額もそろっていません。「税金は188万まで大丈夫」と「保険は150万で線が引かれる」を混同しないことが、この論点の一番のつまずきどころです。

だからこの家庭の現実的な結論はこうなります。「税金のことだけなら150万まではまったく気にしなくていい。それを超えて働くなら、勤め先で社会保険に入ることになるかを一度確認しよう」。

手続きは?——年末調整で1枚の申告書を出すだけ

「難しい手続きが増えるのでは」と身構える必要はありません。親(例では父)が勤め先の年末調整で、扶養に関する申告書に子の見込み年収を書いて出せば、多くの場合それで完結します。特定親族特別控除に対応した申告書の欄に、子の情報と収入の見込みを記入する形です。

年の途中で子の収入見込みが変わったら、年末調整の書類を出すタイミングで最新の数字に直せば大丈夫です。書き方に迷ったら、勤め先の給与担当や税務署の案内、国税庁のサイトで確認できます。

こうした「わが家はどの働き方が一番手取りが多いのか」を、教育費や親の老後資金までまとめて相談したいときは、お金の専門家に無料で相談できるサービスもあります。世帯の収支を一度棚おろししたい人は使ってみる手もあります。

今日、子にかけるべき一言

夏休みのシフトを組んでいる今こそ、去年までの「103万を超えないで」を上書きするタイミングです。19歳から22歳の子を持つ親なら、伝える内容はシンプルです。

  • 税金だけなら、子の年間バイト代150万円までは親の控除は満額。気にせず働いていい。
  • 150万円を超えても、188万円までは親の控除は段階的に残る。一気に消える崖はもうない。
  • ただし社会保険の壁(親の健保の扶養は150万円未満が目安、子自身の加入条件も別にある)は税金とは別。ここだけは超える前に勤め先へ確認する。
  • 手続きは親の年末調整で申告書を出すだけ。子の見込み年収を書く欄がある。

古い常識のままだと、子はせっかくの働く意欲を削がれ、家計は稼げるお金を取りこぼします。制度が「稼いでいい」に変わったのなら、かける言葉も変えるのが親の役目です。

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参考情報

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。税制の適用は個別事情により異なります。正確な取り扱いは国税庁の資料や勤務先・税務署でご確認ください。