副業で所得489万円を超えると、基礎控除が37万円減る
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2026年分と2027年分の所得税では、本業と副業を合わせた「合計所得金額」が489万円を超えた瞬間に、基礎控除が104万円から67万円へ37万円減ります。国税庁のタックスアンサーNo.1199に載っている区分です(最終確認日:2026-10-16)。
副業の利益を1万円増やしたら、手取りが3万円以上減る。 給与収入600万円の会社員なら、そうなる幅が実際にあります。年内の売上や経費の計上を考え始める10月のうちに、自分が境目の近くにいるかを確かめてください。
この記事では架空の会社員を1人置き、境目の手前と向こう側で税金がいくら変わるかを順に計算します。
架空の会社員Bさんの2026年
例として、次の会社員を考えます。実在の人物ではなく、計算のために置いた架空のモデルです。
- 30代の会社員Bさん、独身、給与収入は年600万円
- 社会保険料は年90万円(給与の15%と仮定)
- 副業はWebライターの業務委託。売上から経費を引いた利益(雑所得)は、10月時点で年53万円の見込み
- 生命保険料控除やiDeCoなど、ほかの控除はないものとする
Bさんの給与所得は436万円です。国税庁のNo.1410によると、令和8年分の給与所得控除は、収入360万円超660万円以下なら「収入×20%+44万円」。600万円なら164万円が差し引かれます。
副業の53万円を足すと、合計所得金額は489万円ちょうど。Bさんは、崖のふちに立っています。
489万円で基礎控除が変わる仕組み
令和8年分・令和9年分の基礎控除は、合計所得金額で次のように決まります(国税庁No.1199)。
| 合計所得金額 | 基礎控除(令和8年分・9年分) |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 62万円 |
104万円は、本則の62万円に、2年間だけの上乗せ42万円を足した額です。489万円を超えると上乗せが5万円に縮み、控除は67万円になります。
段差は37万円です。控除が37万円減れば、税金のかかる所得が37万円増えます。 所得税率10%の人なら、復興特別所得税を含めて約3.8万円の増税です。20%の区分にかかる人なら約7.6万円になります。
TKCの税理士コラムも、この489万円を「隠れた大きな壁」と書いています。給与収入だけの人なら、およそ665万円までが104万円の側です。
住民税には同じ段差がない
住民税の基礎控除は43万円で、今回の改正では据え置かれました。489万円をまたいでも住民税の基礎控除は変わりません。副業が1万円増えたときの住民税は、所得割10%の1,000円が増えるだけです。
副業を1万円増やした場合の手取り
Bさんの副業が予定より1万円多く、利益54万円になった場合と比べます。所得税は国税庁No.2260の速算表で計算し、復興特別所得税2.1%を加えています。
| 項目 | 副業の利益53万円 | 副業の利益54万円 |
|---|---|---|
| 合計所得金額 | 489万円 | 490万円 |
| 基礎控除 | 104万円 | 67万円 |
| 社会保険料控除 | 90万円 | 90万円 |
| 課税所得 | 295万円 | 333万円 |
| 所得税の税率 | 10% | 20% |
| 所得税(復興税込み) | 約20.2万円 | 約24.4万円 |
所得税の差は約4.2万円です。Bさんの場合、課税所得が330万円の境を越えるため、税率も10%から20%に上がります。住民税の1,000円を足すと、税金は約4.3万円増えます。
収入は1万円増えて、税金は約4.3万円増える。差し引きで、手取りは約3.3万円減ります。
手取りが元に戻るのは約59万円から
崖の向こう側では、副業の利益が1円増えるごとに、所得税20.42%と住民税10%が引かれます。手元に残るのは約7割です。
約3.3万円の穴を、この7割で埋めるには、さらに約4.7万円の利益が要ります。計算すると、Bさんの副業の利益がおよそ59万円を超えたところで、ようやく53万円で止めたときの手取りに追いつきます。
- 利益58万円:53万円のときより手取りが約5,000円少ない
- 利益59万円:53万円のときより手取りが約1,900円多い
53万円から59万円までの6万円分は、働いても手取りが増えない区間です。
社会保険料が少ない人ほど課税所得は大きくなり、境目の位置も動きます。自分の数字で計算するときは、源泉徴収票の見込み額を使ってください。
Bさんが年内にできる3つの手
合計所得金額は、所得控除を差し引く前の金額です。ここを取り違えると、効かない手に時間を使います。
効くのは経費の記録
副業の利益は「売上-経費」です。仕事に使ったパソコン周辺機器、資料代、通信費の仕事分などを漏れなく計上すれば、利益は下がります。Bさんの場合、記録していなかった経費が1万円見つかれば、それだけで489万円以下に戻れます。
ただし、経費にできるのは副業のために実際に使ったものだけです。家と兼用のものは、使った割合で分けます。崖を避けるために必要のない物を買うと、税金は減っても現金はそれ以上に出ていきます。
青色申告は事業所得の人だけ
副業が事業所得にあたる人は、青色申告特別控除で所得そのものを下げられます。国税庁No.2072によると、e-Taxでの申告などの条件を満たせば最高65万円です。
Bさんのような雑所得では使えません。雑所得と事業所得の分かれ目は副業収入は事業所得?雑所得?区分で節税額が大きく変わるで整理しています。
iDeCoとふるさと納税は境目を動かさない
iDeCoの掛金や生命保険料控除は、合計所得金額を出した後で差し引く所得控除です。ふるさと納税も同じく、境目の判定には関わりません。iDeCoを増やしても、489万円の判定は1円も変わりません。
報酬の入金日を年明けにずらす方法も、原則として効きません。収入は、仕事を終えて報酬を受け取る権利が確定した年に計上するのが原則です。12月に納品した仕事の報酬は、1月入金でも2026年分になります。
年末調整と確定申告での扱い
年末調整では、基礎控除申告書に「給与以外の所得」の見込みも書き込みます。Bさんのように副業込みで境目の近くにいる人は、副業の見込み額で基礎控除の欄が104万円か67万円かに分かれます。
書き方は年末調整の書類、3枚をこの順番で書くにまとめています。見込みと実際がずれた場合は、翌年の確定申告で正しい金額に直ります。副業の所得が20万円を超えるBさんは、もともと確定申告が必要です。
確定申告が必要かどうかで迷う人は、確定申告3問診断で先に確認できます。
この崖が問題になるのは2026年分と2027年分の2年間です。42万円の上乗せは、令和8年分・9年分に限った特例として決まっています。
10月中にBさんがやること
境目の判定は、12月31日時点の1年分の数字で決まります。10月なら、まだ数字を確かめる時間があります。
- 源泉徴収票の見込みから、本業の給与所得を出す(給与600万円なら436万円)
- 副業の1月から今日までの売上と経費を集計し、12月までの利益を見積もる
- 合計が480万円台後半なら、経費の記録漏れがないかを領収書とカード明細で確かめる
- 合計がはっきり500万円を超えるなら、崖は越えたものとして、副業を増やす計画をそのまま進める
崖を気にするべきなのは、境目の数万円以内にいる人だけです。 副業の利益が100万円、200万円と伸びる見込みなら、37万円の段差は通過点の1つにすぎません。
経費の記録が手作業で追いつかない人は、レシートとカード明細をまとめて取り込める家計簿・会計ツールを使うと、12月の集計が短く済みます。
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参考情報
- 国税庁「No.1199 基礎控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- TKC WEBコラム「所得税に逆ざやは無い!?」(税理士 若山昌美・2026年5月25日更新) https://tkc.jp/consolidate/webcolumn/column202605_1_col02
税額はすべて架空モデルでの概算です。実際の税額は、ほかの所得控除や税額控除によって変わります。最新の制度は国税庁の公式サイトでご確認ください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。