副業、バイトは保険料増・業務委託は据え置き
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先に結論から書きます。2026年10月1日から、副業がアルバイト・パートで週20時間以上働いている人は、副業先でも社会保険(健康保険・厚生年金)に入ることになります。これまで加入の分かれ目だった「月額賃金8.8万円以上」という条件が、なくなるためです。
一方、同じ副業でも業務委託・フリーランス型(クラウドソーシング、せどり、ブログなど)は雇用ではないため、この改正の影響を受けません。保険料は本業の給料だけで決まったままです。
**同じ「月8万円の副業」でも、契約の形が違うだけで手取りに年13万円以上の差が出ます。**この記事では、その差がどこから生まれるのか、何を9月中に確認しておけばいいのかを、数字を置いて整理します。
(本記事の制度・保険料率の最終確認日:2026-08-28)
10月に消えるのは「8.8万円」という線だけ
2025年6月に成立した年金制度改正法で、短時間労働者の社会保険加入要件が変わります。2026年10月1日から適用される中身は、次のとおりです。
消えるもの
- 所定内賃金が月額8.8万円以上(年収にしておよそ106万円)という賃金要件
残るもの
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 2か月を超えて雇用される見込みがあること
- 学生でないこと
- 勤め先の厚生年金被保険者数が51人以上であること(この企業規模の条件は2027年9月まで。2027年10月に36人以上、以降さらに段階的に引き下げられる予定)
判定の軸が「いくら稼いだか」から「何時間働いたか」に移る、と考えると分かりやすくなります。撤廃されるのは金額の線であって、時間の線はむしろ主役に格上げされます。
そしてこれは扶養内のパートだけの話ではありません。本業でフルタイム勤務をしながら副業で週20時間以上アルバイトをしている会社員も、同じルールの対象です。
契約の形で、こう分かれる
自分がどこに当てはまるかを先に確認してください。
副業 | 2026年10月の社会保険適用拡大
副業の形態別・10月からの社会保険の扱い
本業でフルタイム勤務をしている会社員が、副業をしている場合
| 副業先での社会保険 | 保険料の決まり方 | 自分でする届出 | |
|---|---|---|---|
| バイト・パート(週20時間以上) 副業先が51人以上 | △ 10月から加入対象になる | △ 2社の報酬を合算して決まる | △ 二以上事業所勤務届が必要 |
| バイト・パート(週20時間未満) 時間の条件で外れる | ○ 加入対象外のまま | ○ 本業の報酬だけで決まる | ○ 不要 |
| 業務委託・フリーランス型 クラウドソーシング等 | ○ 雇用ではないため対象外 | ○ 本業の報酬だけで決まる | ○ 不要(確定申告は別に必要) |
- ※副業先の厚生年金被保険者数が50人以下の場合、2027年9月までは短時間労働者としての適用拡大の対象外です
- ※週30時間以上など、その職場の通常の労働者の4分の3以上働く場合は、企業規模にかかわらず以前から加入対象です
- ※学生は原則として適用拡大の対象外です
資産化計画
見落としやすいのが、企業規模の条件が副業先ごとに判定される点です。本業が大企業でも、副業先が個人経営の飲食店であれば、2027年9月までは対象外です。逆に、副業先が全国チェーンなら、本業の会社の規模とは関係なく対象になります。
保険料は「合算してから、分け直す」
ここが今回いちばん誤解されるところです。副業先で新たに加入しても、副業先の給料だけを見て保険料が計算されるわけではありません。複数の事業所で同時に加入要件を満たすと、両方の報酬を合算した金額で標準報酬月額が決まり、その保険料を各事業所の報酬額に応じて按分します(日本年金機構)。健康保険についても、加入する保険者は自分で1つ選びます。
例として、本業の月給30万円・40歳未満の会社員が、副業のアルバイトで月8万円(週20時間、従業員51人以上の勤務先)を稼いでいるケースを置きます。
2026年度の本人負担分の料率は次のとおりです。
- 厚生年金保険料率 18.30%(労使折半で本人9.15%)
- 健康保険料率 全国平均9.90%(労使折半で本人4.95%)
- 子ども・子育て支援金率 0.23%(労使折半で本人0.115%。2026年4月分から)
合計すると、本人負担はおよそ**14.2%**です。
2026年9月まで:副業先の月給8万円は8.8万円未満なので加入対象外。保険料は本業の30万円だけにかかります。
- 300,000円 × 14.215% = 月およそ42,600円
2026年10月から:賃金要件が消えて副業先も加入対象になり、合算した38万円が標準報酬月額になります。
- 380,000円 × 14.215% = 月およそ54,000円
差額は月およそ11,400円、年間でおよそ13.6万円。副業で得ていた月8万円のうち14%前後が保険料に変わる計算です。
按分の結果、本業の給与から引かれる額はほぼ変わらず(38万円分の保険料 × 30/38)、増えた分は副業先の給与から天引きされる形になります。「副業の給料日に、思っていた額が入っていない」という形で気づくことになります。
なお標準報酬月額は等級表に当てはめて決まるため、報酬の合計額によっては上の計算とわずかにずれます。正確な額は10月以降に届く決定通知書で確認してください。副業を時給で考えている人は、この負担増を織り込んだ実質の時給を当サイトの実質時給計算機で一度出しておくと判断しやすくなります。
届出を出すのは、会社ではなく自分
複数の会社で社会保険の加入要件を満たしたときに提出する「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」は、会社ではなく被保険者本人が提出します。期限は事実発生から10日以内。提出先は、自分が選んだ事業所の所在地を管轄する年金事務所または事務センターです(電子申請・郵送・窓口持参が可能)。年末調整の書類のように会社が配ってくれるものではないため、知らないまま期限を過ぎやすい届出です。
そしてもう一点、これを伝えないとフェアではないので書きます。この届出を出すと、選択した事業所に対して合算後の標準報酬月額が通知されます。**本業を選択事業所にすれば、本業の会社は「自分の給与額より大きい標準報酬月額」を知ることになります。**副業を会社に伝えていない人には、ここが実質的な分岐点です。把握される経路は副業が会社にバレる本当の原因と2026年版対策で整理しています。
増えた保険料は、まるごと消えるわけではない
負担増の話だけで終わらせると判断を誤るので、戻ってくる側も数字で置きます。
将来の老齢厚生年金
厚生年金の報酬比例部分は、おおまかに「平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数」で計算します。標準報酬月額が8万円上がった状態で12か月加入すると、80,000円 × 5.481/1000 × 12か月 = 年およそ5,300円(終身)増える計算です。65歳から20年受け取っておよそ10.6万円。1年間の保険料負担増13.6万円と比べると、年金だけで回収するには20年強かかります。
健康保険の給付
標準報酬月額は、傷病手当金や出産手当金の計算基礎でもあります。30万円から38万円に上がると、日額(標準報酬月額÷30×2/3)はおよそ6,667円から8,444円へ、1日あたり約1,800円増えます。長く休むことになったとき、この差は効きます。加えて労使折半なので、自分が11,400円増えるとき勤務先も同額を負担しています。
つまり、**「損得」ではなく「手取りを削って将来と保障に振り替えている」というのが実像です。**そのうえで、いま手取りが必要な人にとっては負担であることも事実です。判断はそこで分かれます。
9月のうちに確認する3つのこと
1. 副業先の労働時間と従業員数を確認する
雇用契約書か勤務シフトで、所定労働時間が週20時間以上かどうかを見ます。20時間ちょうどは対象です。あわせて、副業先の厚生年金被保険者数が51人以上かどうかを確認します。分からなければ、副業先の担当者に「10月の適用拡大の対象事業所か」と直接聞くのが早いです。
2. 対象になるなら、10月以降の手取りを先に計算する
合算した報酬 × 約14.2%で、10月からの本人負担を出しておきます。副業の目的が「月◯万円を家計に足すこと」なら、その目標額を保険料の前で置いていたのか後で置いていたのかを確認してください。ここがずれていると、10月に予定が崩れます。
3. 本業と副業の入金を1か所で見えるようにする
保険料が2つの給与に分かれて天引きされると、給与明細を別々に見ているかぎり手取りの合計が分かりにくくなります。振込先の口座を含めてまとめて記録できる状態を10月より前に作っておくと、変化を1回で確認できます。
よくある質問
Q. 副業先で加入すると、健康保険証は2枚になりますか。
いいえ。健康保険は自分で選んだ1つの保険者が管掌します。届出の名称に「被保険者所属選択」と入っているのはそのためです。マイナ保険証や資格確認書も、選択した保険者のものを使います。
Q. 副業先が週20時間未満なら、何もしなくていいですか。
短時間労働者としての適用拡大の対象にはなりません。ただし、その職場の通常の労働者の4分の3以上(多くの職場で週30時間以上)働く場合は、企業規模や賃金にかかわらず以前から加入対象です。時間が増えたときは条件を見直してください。
Q. 副業が業務委託なら、社会保険は一切関係ないですか。
社会保険については、本業で加入しているため副業分は関係ありません。ただし所得税・住民税は別です。給与以外の所得が年20万円を超えるなら確定申告が必要になります。区分の考え方は副業収入は事業所得?雑所得?区分で節税額が大きく変わるにまとめています。
Q. 手取りを減らしたくないので、副業の時間を週19時間に抑えるのは有効ですか。
保険料の発生を避ける意味では有効ですが、時間を減らせば副業収入そのものも減ります。上の例なら、月8万円から社会保険料およそ1.1万円を引いて6.9万円(さらに所得税・住民税が引かれます)。時間を減らした場合の収入と比べ、どちらが大きいかで判断してください。時間を削る判断は、削った後の金額を出してから決めるものです。
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参考情報
- 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト|社会保険加入の要件」 https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/jugyouin/taisho/
- 日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20131022.html
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)東京支部「2026年度の健康保険料率等について」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/tokyo/public_relations/e-mail_magazine/473.html
保険料率は都道府県や年度で変わります(健康保険料率は2026年度で全国平均9.90%、東京支部は9.85%)。本記事の試算は全国平均で計算した概算です。自分の勤務先が適用拡大の対象かどうかを含め、最終的な数字は勤務先または年金事務所でご確認ください。
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