奨学金の利率が年3%に、繰上返還は急ぐべき?
※本サイトの記事にはアフィリエイト広告(PR)を含む場合があります
※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。
先に結論を書きます。「奨学金の金利が上がっている」というニュースは事実ですが、いま返済中の人の大半には、直接の影響がありません。返済額が動く可能性があるのは、借りるときに「利率見直し方式」を選んだ人だけです。
繰上返還を急ぐべきかどうかも、貯金額や年収ではなく自分の利率が何%なのかで答えが変わります。そこを確かめないまま、まとまったお金を返済に突っ込むのは早すぎます。この記事では、日本学生支援機構(JASSO)が公表している数字だけを使って判断の順番を整理します。
2026年7月に借り終えた人は、上限の年3.000%
JASSOが公表している「貸与利率の推移」によると、令和8年度(2026年度)に貸与が終了した第二種奨学金・基本月額の利率は次のとおりです。
| 貸与終了月 | 利率固定方式 | 利率見直し方式 |
|---|---|---|
| 2026年4月 | 2.722% | 1.874% |
| 2026年5月 | 2.922% | 2.000% |
| 2026年6月 | 2.922% | 1.900% |
| 2026年7月 | 3.000% | 2.000% |
7月に貸与が終わった人の固定方式は、年3.000%。JASSOは基本月額に係る利率について年3.0%を上限と定めているので、上限にぴたりと張り付いた状態です(2026年8月23日時点でJASSO公表資料を確認)。
5年前と並べると変化の大きさがはっきりします。令和3年度(2021年度)3月に貸与が終了した人の利率は、固定方式で0.369%、見直し方式では0.040%でした。同じ額を同じ4年間借りても、卒業した月が違うだけで利率が8倍近く変わる。これが第二種奨学金の設計です。
もうひとつ、意外と知られていない前提があります。利率が決まるのは貸与開始月ではなく、貸与終了月です。在学中は無利子で、借り終わって初めて自分の利率が確定します。だから「入学した年の金利」を覚えていても意味がなく、確認すべきは卒業月の数字です。
影響を受けるかは「固定か、見直しか」だけで決まる
第二種奨学金を申し込むとき、利率の算定方法として「利率固定方式」か「利率見直し方式」のどちらかを選んでいます。この選択が、今回の金利上昇局面での立ち位置をそのまま決めます。
第二種奨学金 | 利率の算定方法
金利が上がったとき、どちらが動くのか
返済中の人が受ける影響は、この選択だけで決まります
| 金利上昇の影響 | 返済総額の見通し | |
|---|---|---|
| 利率固定方式 貸与終了時の利率が完済まで続く | ○ 市場金利が動いても利率は変わらない | ○ 借り終えた時点で確定している |
| 利率見直し方式 おおむね5年ごとに見直し | × 次の見直しで上がることがある | △ 見直しのたびに変わる |
- ※どちらも基本月額に係る利率は年3.0%が上限です(JASSO)
- ※市場金利が下がった場合、見直し方式は貸与終了時より低い利率になることもあります
資産化計画
見直し方式は「おおむね5年ごとに見直す」仕組みなので、金利が下がる局面では有利に働きます。実際、2020年前後に借り終えた人の見直し方式は0.0%台で、固定方式より圧倒的に低い水準でした。得をしていた仕組みが、金利上昇局面では逆向きに効いている、というのが今起きていることです。
0.5%と3.0%では、利子が約140万円違う
利率の差が返済総額にどう出るのか。JASSOが公式サイトに載せている試算がいちばん確実なので、そのまま引用します。月10万円を4年間(貸与総額480万円)借り、20年・240回で返す場合の数字です。
| 適用利率 | 返還月額 | 返還総額 | うち利子 |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 21,069円 | 5,056,654円 | 256,654円 |
| 1.0% | 22,172円 | 5,321,420円 | 521,420円 |
| 1.5% | 23,309円 | 5,594,115円 | 794,115円 |
| 2.0% | 24,478円 | 5,874,754円 | 1,074,754円 |
| 2.5% | 25,680円 | 6,163,224円 | 1,363,224円 |
| 3.0% | 26,914円 | 6,459,510円 | 1,659,510円 |
0.5%なら利子は約26万円ですが、3.0%だと約166万円。その差は約140万円で、月々の返済額でも6,000円近く違います。20年間、毎月6,000円の差です。
ここで大事なのは、この表を「怖い数字」として読まないこと。あなたに当てはまるのは、この6行のうち1行だけです。0.5%の行にいる人が、3.0%の行を見て慌てて繰上返還する必要はまったくありません。
繰上返還で消えるのは利子、短くなるのは「期間」
繰上返還を検討する前に、仕組みを正確に押さえておきます。JASSOの案内で確認できる範囲では、次のとおりです。
- 手数料はかからない。現在登録している振替口座からの振替になります
- 繰り上げにあたる期間の利子はかからない。これが繰上返還で得られる唯一のメリットです
- 一部繰上返還をすると、繰り上げた分だけ返還期間が短縮される。翌月からの返還は通常どおりで、月々の返済額は変わりません
- 機関保証制度を選んでいる人は、返還期間の短縮によって保証料の一部が返ってくる場合がある
3つ目が、いちばん誤解されやすいところです。「まとまった額を返せば毎月の負担が軽くなる」と思って繰上返還すると、月々の引き落とし額は1円も変わらず、終わりが早まるだけという結果になります。家計を今すぐ楽にしたいという目的なら、繰上返還は手段として合っていません。
なお、在学猶予中の繰上返還に利子はかかりませんが、猶予が承認される前に申し込むと利子がついた繰上返還になるので、順番には注意してください。
繰上返還を急ぐ人、急がなくていい人
ここまでの数字を踏まえると、判断は次のように分かれます。
急いだほうがいい人は、利率見直し方式で借りていて、直近の見直しで利率が上がった人です。見直し方式は約5年ごとに利率が変わるため、残債が大きいうちに利率が上がると、そこから先の利子が積み上がります。金利が上がる方向の局面では、返済を前倒しした分だけ、確実に利子を減らせるという効果がはっきり出ます。
一方、急がなくていい人は、利率固定方式で1%を下回っている人です。2010年代半ばまでに借り終えた人の多くはここに入ります。固定方式は完済まで利率が変わらないので、金利が上がっても返済総額は1円も増えません。手元の資金を繰上返還に回して得られる「利益」は、年0.5%なら年0.5%分の利子軽減にとどまります。
この層にとっては、同じお金を新NISAのつみたて枠に回すほうが期待値としては合理的になりやすい。投資には元本割れの可能性があり、繰上返還のような確定した効果ではありませんが、年0.5%の負債を急いで消すために非課税枠を空けたまま置いておくのはもったいないという判断は成り立ちます。
金額の感覚をつかみたい人は、新NISA積立シミュレーターで、繰上返還に回そうとしている金額をそのまま積立額に置き換えて試算してみてください。20年という時間軸は、子どもの教育費を新NISAで貯める3つの理由で扱った教育資金づくりとも重なります。
どちらとも決めきれない、住宅資金や教育費とのバランスも含めて整理したい、という場合は、家計全体を見てくれる相手に一度並べてもらうほうが早いこともあります。
返済が苦しいなら、繰上返還より先に使う制度がある
繰上返還の話は、あくまで「返せていて、余力がある人」の選択肢です。毎月の返済が重いと感じているなら、順番が違います。
JASSOには減額返還制度があります。返還月額を2分の1・3分の1・4分の1・3分の2のいずれかに減らし、その分だけ返還期間を延長する仕組みです。経済的事由の収入の目安は、給与所得者で年間収入400万円以下(本人が扶養している子が2人なら500万円以下、3人以上なら600万円以下)。1回の願い出につき適用期間は12か月で、最長15年まで延長できます。
ここに、見落としやすい制約があります。返還期限猶予中・減額返還中は、繰上返還ができません。「まず減額返還にして、余裕ができたら繰上返還」という順番は制度上そのままでは通らないので、どちらを使うかは分けて考える必要があります。
金利が上がった局面で、確定した負債と手元資金のどちらを優先するかという構図は、住宅ローンでも同じです。考え方の整理には変動金利が上がった今、住宅ローンは動くべきかも参考になります。
今日の10分でできること
やることは3つだけです。
- スカラネット・パーソナルにログインし、自分の利率と算定方法を確認する。貸与終了後に届いた「第二種奨学金の返還条件等通知及び口座振替(リレー口座)加入通知」にも記載があります。第一種(無利子)だけを借りた人は、そもそも利子がないのでここで終わりです
- 固定方式か見直し方式かをメモする。見直し方式なら、次の見直し時期がいつかも合わせて確認します
- 上の表で、自分の利率の行だけを見る。1%未満なら急ぐ必要はなく、2%を超えているなら前倒しの検討に入る、という線引きで十分です
繰上返還を申し込む場合、スカラネット・パーソナルからならスマートフォンでも手続きが完結します。郵送の場合は、繰上返還希望月の4か月前の振替日翌日から、希望月の1か月前の振替日までが受付期間です(振替日は原則27日)。思い立った月にすぐ実行できるものではないので、余裕をもって動いてください。
よくある質問
Q. 第一種奨学金も利率が上がるのですか。
いいえ。第一種奨学金は無利子の貸与奨学金なので、利率の上昇とは無関係です。今回の話が関係するのは、有利子で借りた第二種奨学金(入学時特別増額貸与奨学金を含む)だけです。
Q. 借りるときに固定方式を選んだか見直し方式を選んだか、覚えていません。
貸与終了後にJASSOから届く「返還条件等通知」に記載があります。手元にない場合は、スカラネット・パーソナルで確認できます。なお、算定方法は貸与終了後には変更できません。変更できるのは貸与期間が終了する年度の一定時期までです。
Q. 一部繰上返還をすると、毎月の返済額は下がりますか。
下がりません。一部繰上返還で短くなるのは返還期間で、翌月からの返還は通常どおり続きます。毎月の負担そのものを軽くしたい場合は、繰上返還ではなく減額返還制度が該当します。
あわせて読みたい
参考情報
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。