節税・税金

市販薬の控除、インフル接種が要るのは申告する人だけ

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インフルエンザの予防接種は、10月から受け付ける医療機関があります。接種代は確定申告で控除されません。それでも接種の領収書は、市販薬の税金を減らす「条件」の証明になります。

条件を満たす必要があるのは、確定申告をする本人だけです。家族が接種していても、申告する人が健診も接種も受けていなければ使えません。

この記事でわかることは3つです。

  • インフルエンザの接種代が医療費控除にならない理由
  • セルフメディケーション税制で、健診や接種が必要な人の範囲
  • 夫と妻のどちらが申告すると税負担が多く減るか

(制度内容の最終確認日:2026-09-10。国税庁タックスアンサーは令和8年4月1日現在の法令で確認)

架空の共働き世帯の2026年の薬代

例として、30代の共働き夫婦と3歳の子の世帯を考えます。以下はすべて架空の設定です。

家族働き方課税所得2026年の健診・接種
夫(34歳)会社員300万円勤務先の定期健康診断を受けた
妻(32歳)フリーランスのデザイナー150万円まだ何も受けていない
子(3歳)―――

夫婦とも、総所得金額等は200万円以上とします。家族の2026年の支出は次のとおりです。

  • 通院と処方薬の自己負担:家族で年6万円
  • ドラッグストアで買った市販薬:年3万円(1〜9月に2万1千円、10〜12月に9千円の見込み)
  • 市販薬はすべてセルフメディケーション税制の対象品で、風邪や鼻炎の治療に使ったもの

9月のある日、妻が「インフルの予防接種を受けると、市販薬の税金が戻るらしい」と言い出しました。この世帯が決めるべきなのは、接種するかより先に「だれが申告するか」です。判断の材料は次の3点です。

  • 接種代そのものは控除になるのか
  • 通常の医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらを使うのか
  • 夫と妻のどちらが申告するのか

予防接種代そのものは控除の対象外

インフルエンザの接種代は、医療費控除にもセルフメディケーション税制にも入りません。国税庁の質疑応答事例は、海外旅行の前に受ける予防接種を例に挙げています。そのうえで、疾病の予防のための費用は医療費控除の対象とはならないと回答しています。

医療費控除の対象は、医師による診療や治療の対価です。健康診断の費用も原則として含まれません(国税庁No.1122)。セルフメディケーション税制でも、人間ドックなどの取組の費用は対象外です(国税庁No.1129)。

市販薬の代金は、目的によって扱いが分かれます。風邪薬のように治療のために買った薬は、通常の医療費控除でも医療費に入ります。ビタミン剤のように予防や健康増進のための薬は入りません(国税庁No.1122)。

通院費や家族の合算など、医療費控除の基本は医療費控除で税金を取り戻す!30代が知るべき完全ガイドで整理しています。

通常の医療費控除には届かない9万円

この世帯は、通常の医療費控除では1円も控除されません。通院の6万円に治療用の市販薬3万円を足しても、合計は9万円です。通常の医療費控除が使えるのは、10万円を超えた部分からです。総所得金額等が200万円未満の人は、その5%を超えた部分になります(国税庁No.1120)。

セルフメディケーション税制では計算が変わります。対象の市販薬の合計から1万2千円を引いた額が控除額で、上限は8万8千円です(国税庁No.1129)。

  • 通常の医療費控除:9万円は10万円に届かず、控除なし
  • セルフメディケーション税制:3万円 − 1万2千円 = 1万8千円

節税・税金 | 架空の共働き世帯の例

通常の医療費控除とセルフメディケーション税制

医療費6万円・対象の市販薬3万円の世帯の場合

控除が始まる金額この世帯の控除額健診や接種の条件
通常の医療費控除 通院・処方薬・治療用の市販薬 △ 年10万円を超えた部分(総所得金額等200万円未満は5%超) × 0円(合計9万円で届かない) ○ 不要
セルフメディケーション税制 対象の市販薬だけ ○ 年1万2千円を超えた部分(上限8万8千円) ○ 1万8千円 △ 申告する本人に必要
  • ※2つの制度は選択適用で、同じ年に両方は使えません
  • ※金額は架空の世帯の例です
  • ※予防接種や健診の費用は、どちらの控除額にも入りません

資産化計画

2つの制度は、どちらか一方を選んで申告します。申告した後で、もう一方の制度に選び直すことはできません(国税庁No.1131)。

健診や接種が必要なのは申告する本人

セルフメディケーション税制の条件は、申告する本人が満たせば足ります。国税庁は、生計を一にする配偶者や親族が健診や接種を受けている必要はないと説明しています(国税庁No.1133)。反対に、家族が接種していても申告者本人が何も受けていなければ使えません。

条件になる「一定の取組」は、次の5種類です(国税庁No.1129、No.1133)。

  • 勤務先で受ける定期健康診断
  • 健康保険の保険者や市区町村が行う健康診査(人間ドックなど)
  • 定期予防接種と、インフルエンザワクチンの予防接種
  • 特定健康診査・特定保健指導
  • 市区町村のがん検診

取組は、控除を受ける年分のうちに受けていれば足ります(国税庁No.1133)。国税庁の説明には、市販薬を買う前に受けるという条件はありません。

この世帯では、夫がすでに勤務先の定期健康診断を受けています。夫が申告するなら、妻の接種は税制の条件としては不要です。接種するかどうかは体調やかかりつけ医との相談で決めるもので、数千円の税金で決めるものではありません。

夫と妻どちらが申告するかで約900円の差

税率の高い夫が申告すると、税負担は約3,640円減ります。生計を一にする家族のために買った市販薬は、まとめて1人で申告できます(国税庁No.1129)。控除額1万8千円は同じでも、かける税率で結果が変わります。

申告する人所得税(復興特別所得税2.1%込み)翌年度の住民税(10%)合計
夫(所得税率10%)約1,840円1,800円約3,640円
妻(所得税率5%)約920円1,800円約2,720円

所得税率は、課税所得194万9千円までが5%、195万円から329万9千円までが10%です(国税庁No.2260)。住民税の所得割は税率がおおむね10%で一律のため、だれが申告しても1,800円で変わりません。夫と妻の差は所得税の部分だけで、約920円です。

妻が申告して得をするのは、税率の関係が逆になった年です。たとえば妻の課税所得が夫を上回り、妻の税率のほうが高くなった年が当てはまります。

接種が条件として効く3つのケース

接種が意味を持つのは、申告する人が健診をひとつも受けていない年です。次の3つのケースが当てはまります。

  • 健診を受けていないフリーランスや自営業の人が、自分で申告する
  • 会社員でも、転職のすき間などでその年の定期健康診断を受けていない
  • 家族のうち健診を受けた人より、受けていない人の税率が高い

この世帯なら、妻の課税所得が夫を上回る年が3つめのケースです。その年は妻が接種を受け、妻が申告すると税負担が多く減ります。

会社員の健診でも、書類の中身には条件があります。結果通知表に「定期健康診断」の名称か勤務先の名称が必要です。どちらも書かれていない場合は、勤務先に取組の証明書を出してもらいます(国税庁No.1134)。

10月から翌年の申告までに残すもの

申告書に添付する書類はありませんが、確定申告期限から5年間は提示を求められることがあります。明細書を申告書に付け、取組の証明書類と市販薬の領収書は手元に保管します(国税庁No.1129、No.1134)。

時期この世帯がすること
10〜12月接種した場合は、氏名・接種した年・医療機関名が載った領収書か予防接種済証を残す
1〜12月対象の市販薬のレシートを、家族分まとめて1か所に残す
年明け夫の定期健康診断の結果通知表に、健診の名称か勤務先名があるか確かめる
翌年の確定申告セルフメディケーション税制の明細書を作り、夫が申告する
申告後5年間市販薬の領収書と取組の証明書類を保管する

対象の市販薬には、箱に共通識別マークが付いた商品があります。ただしマークが付いているのは対象品の一部です(国税庁No.1129)。マークのない薬は、厚生労働省が公表している対象品目の一覧で確かめられます。

会社員の夫は、医療費控除の特例を受けるために自分で確定申告をします。副業の収入があって、申告義務の有無もあわせて知りたい人は確定申告3問診断で目安を確かめられます。

市販薬の領収書を12月にまとめて探すと、どの店でいくら払ったかをさかのぼる手間がかかります。カードや口座の支出を自動で取り込む家計簿を使うと、ドラッグストアでの支払いを月ごとに見返せます。カードの明細だけでは対象品かどうか分からないため、レシートの保管と組み合わせて使います。

2027年分から対象の薬が広がる予定

2026年分は現在の対象品で計算し、2027年分からは対象の医薬品が広がります。財務省の「令和8年度税制改正の大綱」に、次の見直しが示されています。所得税は2027年分以後、住民税は2028年度分以後に適用するとされています。

  • スイッチOTC医薬品の部分は、適用期限を撤廃
  • それ以外の医薬品の部分は、適用期限を5年延長
  • 胃腸薬などの消化器官用薬と、一定の生薬を含むせき止め・たん切りの薬を対象に追加
  • 一定の検査薬(体外診断用医薬品)と、一定の薬局製造販売医薬品を対象に追加
  • 痩身や美容の目的で使われる可能性がある医薬品は対象から除外

大綱のこの項目には、1万2千円を超えた部分を控除する計算や、上限8万8千円を変える記載はありません。2027年分の対象品目は、厚生労働省の一覧が更新されてから確かめてください。

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参考情報

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。